一般的に軽合金と総称されるアルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金などの金属材料があり、 なかでもアルミニウム合金は鋳造用・機械加工用に最も多く利用されています。
純アルミニウムに、銅、ニッケル、亜鉛、ケイ素、マグネシウムなどを加えることにより、 軽さ、強さ、加工性、耐食性などに優れた合金を加えたアルミ合金鋳物は、 身近な建築材料から人工衛星やロボットまで、広範囲に利用されています。
鋳造とは、金属を融点より高い温度で溶かして、作りたいものと同じ形状の空洞を持つ型(鋳型)に流しこみ冷やし固める加工法です。
アルミニウム合金の種類によって鋳造性、強度、耐摩耗性、高温強さなどの特性が異なり、AC1BなどJISで定められた材料記号別に、主に以下の10種類にわかれます。
また、アルミニウム合金の種類によって、アルマイト性も違ってきます。

1.AC1B: Al-Cu-Mg系合金

Al-Cu-Mg系合金は鋳造用アルミニウム合金の中で靱性に優れた合金です。切削性がよく、電気伝導性に優れているため架線用導電部品や自転車用部品、航空機用油圧部品などに使用されています。ただし、耐食性が劣るため腐食しやすい環境での使用には適していません。

※靭性とは・・・構造物や素材、または部材の強度、粘り強さのこと。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC1B 4.2~5.0 0.3以下 0.15~0.35 0.1以下 0.35以下 0.1以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC1B 0.05以下 0.05~0.35 0.05以下 0.05以下 0.05以下 残部

AC1Bのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・染色・耐摩耗性はCランク、光輝性はDランクとなります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC1B C C D C

2.AC2A、AC2B: Al-Cu-Si系合金

Al-Cu-Si系合金はAC1B合金よりも銅(Cu)の添加量を減らし、マグネシウムを添加しない合金系です。靭性を少し犠牲にしていますが、ケイ素(Si)を添加したことで鋳造性が改善しており、自動車などのエンジン部品に使われることが多くなっています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC2A 3.0~4.5 4.0~6.0 0.25以下 0.55以下 0.8以下 0.55以下
AC2B 2.0~4.0 5.0~7.0 0.5以下 1.0以下 1.0以下 0.5以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC2A 0.3以下 0.2以下 0.15以下 0.05以下 0.15以下 残部
AC2B 0.35以下 0.2以下 0.2以下 0.1以下 0.2以下 残部

AC2B素材の製品を無色アルマイト・黒色アルマイトしたものが下記の写真になります。
展伸材の素材とは違い、このような色調になります。弊社でアルマイトしている鋳造製品の中でも多い分類になります。

AC2B 無色アルマイト

AC2B 黒色アルマイト

AC2Aのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はCランク、染色・光輝性はDランクとなります。外観部品としてはあまり使われていませんが、機械などの内部部品などに使われていることが多いです。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC2A C D D C

3.AC3A: Al-Si系合金

Al-Si系合金はアルミニウムにケイ素(Si)だけを合金元素として添加したものです。強度はそれほど高くないですが、鋳造性に優れており、大きな伸び、小さい熱膨張係数、良好な耐食性を持っているのが大きな特長となっています。あまり強度を必要とせず、薄肉で複雑な形状や模様を呈する門扉やカーテンウォールなどに使われることが多いです。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC3A 0.25以下 10.0~13.0 0.15以下 0.3以下 0.8以下 0.35以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC3A 0.1以下 0.2以下 0.1以下 0.1以下 0.15以下 残部

AC3Aのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はBランク、染色・光輝性はDランクとなります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC3A B D D B

4. AC4A、AC4C、AC4CH: Al-Si-Mg系合金

Al-Si-Mg系合金はAC3A合金と比較してケイ素(Si)の量を減らして、マグネシウム(Mg)を少し加えたものです。鋳造性を維持したまま機械的性質を改善しているのが大きな特長です。主に、エンジン部品、過給機部品、車両部品、船舶用部品などで使われています。この合金系の中でも、AC4CH合金はAC4C合金よりも不純物の含有量を厳しく規制しており、自動車用ホイールなど保安的要求が高い部品に多く使用されています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC4A 0.25以下 8.0~10.0 0.3~0.6 0.25以下 0.55以下 0.3~0.6
AC4C 0.2以下 6.5~7.5 0.2~0.4 0.3以下 0.5以下 0.6以下
AC4CH 0.1以下 6.5~7.5 0.25~0.45 0.1以下 0.2以下 0.1以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC4A 0.1以下 0.2以下 0.1以下 0.05以下 0.15以下 残部
AC4C 0.05以下 0.2以下 0.05以下 0.05以下 0.05以下 残部
AC4CH 0.05以下 0.2以下 0.05以下 0.05以下 0.05以下 残部

AC4AとAC4Cのアルマイト性は、下記の表のようになり防食は、Bランク、染色・光輝性はDランク、耐摩耗性はCランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC4A B D D C
AC4C B D D C

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5.AC4B: Al-Si-Cu系合金

Al-Si-Cu系合金はAC3A合金と比較してケイ素(Si)の量を減らし、銅(Cu)を添加した合金です。銅を含有するため耐食性は劣りますが、鋳造性に優れており強度も高いので自動車用、電気機器用、産業機械用部品など広い分野で利用されています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC4B 2.0~4.0 7.0~10.0 0.5以下 1.0以下 1.0以下 0.5以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC4B 0.35以下 0.2以下 0.2以下 0.1以下 0.2以下 残部

AC4Bのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はCランク、染色・光輝性はDランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC4B C D D C

6.AC4D: Al-Si-Cu-Mg系合金

Al-Si-Cu-Mg系合金はAC4C合金と比較してケイ素(Si)の量を少しだけ低くして、銅(Cu)を添加してあります。耐圧性、耐熱性に優れていることから、自動車エンジンのクランクケース、油圧機器部品などに使われています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC4D 1.0~1.5 4.5~5.5 0.4~0.6 0.5以下 0.6以下 0.5以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC4D 0.3以下 0.2以下 0.1以下 0.1以下 0.05以下 残部

AC4Dのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はCランク、染色・光輝性はDランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC4D C D D C

7.AC5A: Al-Cu-Ni-Mg系合金

AC5Aは別名Y合金とも言われるAl-Cu-Ni-Mg系のアルミ合金鋳物で、高温環境下での引張強さに優れた材料ですが、反面、鋳造性には難があります。空冷シリンダヘッド、ディーゼル機関用ピストン等に使われます。アルミ鋳物としては最もニッケルの含有量が多いタイプでもあります。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC5A 3.5~4.5 0.7以下 1.2~1.8 0.1以下 0.7以下 0.6以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC5A 1.7~2.3 0.2以下 0.05以下 0.05以下 0.2以下 残部

AC4Dのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はCランク、染色・光輝性はDランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC5A C C D C

8.AC7A: Al-Mg系合金

Al-Mg系合金は代表的な耐食性合金として知られていて、強さも伸びも高く、切削性に優れています。架線金具、船舶用品、建築金具、事務機器部品などに主に使われています。ただし、溶湯は酸化やガスを吸収しやすいため、鋳造性が悪い欠点も持ち合わせています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC7A 0.1以下 0.2以下 3.5~5.5 0.15以下 0.3以下 0.6以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC7A 0.05以下 0.2以下 0.05以下 0.05以下 0.15以下 残部

AC7Aのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・染色・耐摩耗性はAランク、光輝性はBランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC7A A A B A

AC7A素材の製品を化研無色アルマイト・黒色アルマイトしたものが下記の写真になります。
展伸材の素材とは違う色調にはなりますが、鋳造品の中では綺麗な仕上がりになっているかと思います。

AC7A 化研無色アルマイト

AC7A 黒色アルマイト

9.AC8A、AC8B、AC8C: Al-Si-Ni-Cu-Mg系合金

Al-Si-Ni-Cu-Mg系合金はエンジン用のピストンに適するようにつくられた合金です。AC4D合金と比較して銅(Cu)の量を半減させ、ケイ素(Si)の添加量を大幅に増やすことで、小さい熱膨張係数、高い耐摩耗性を持つ剛性の高い合金になっています。自動車、ディーゼル機関車用ピストン、プーリー、軸受などでも使用されています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC8A 0.8~1.3 11~13 0.7~1.3 0.15以下 0.8以下 0.15以下
AC8B 2.0~4.0 8.5~10.5 0.5~1.5 0.5以下 1.0以下 0.5以下
AC8C 2.0~4.0 8.5~10.5 0.5~1.5 0.5以下 1.0以下 0.5以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC8A 0.8~1.5 0.2以下 0.05以下 0.05以下 0.1以下 残部
AC8B 0.1~1.0 0.2以下 0.1以下 0.1以下 0.1以下 残部
AC8C 0.5以下 0.2以下 0.1以下 0.1以下 0.1以下 残部

AC8Aのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はCランク、染色・光輝性はDランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC8A C D D C

10.AC9A、AC9B: Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金

Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金はケイ素(Si)の含有量が最も多く、AC9A合金は23%のケイ素、AC9B合金は19%のケイ素を含有しています。AC8系合金よりも熱膨張係数が小さく、高い剛性と耐摩耗性を保有していることから、2サイクルエンジン用ピストンやディーゼルエンジン用ピストンなどで使われています。

Cu Si Mg Zn Fe Mn
AC9A 0.5~1.5 22~24 0.5~1.5 0.2以下 0.8以下 0.5以下
AC9B 0.5~1.5 18~20 0.5~1.5 0.2以下 0.8以下 0.5以下
Ni Ti Pb Sn Cr Al
AC9A 0.5~1.5 0.2以下 0.1以下 0.1以下 0.1以下 残部
AC9B 0.5~1.5 0.2以下 0.1以下 0.1以下 0.1以下 残部

AC9Aのアルマイト性は、下記の表のようになり防食・耐摩耗性はCランク、染色・光輝性はDランクになります。

A:優 B:良 C:可 D:困難

合金番号 アルマイトの目的
(鋳造材) 防食 染色 光輝 耐摩耗性
AC9A C D D C

このように、AC7A以外の鋳造剤は、アルマイトを施しても、綺麗な色調が望みにくい仕上がりになります。ですが、黒色などのように濃い色調の仕上がりにする場合には、AC2系統やAC4系統などは黒く色が入る傾向にあります。

鋳造品の場合、巣穴がある場合があり、巣穴があるとその周りが綺麗に染色できない傾向にあり、外観部品として使用するには注意が必要です。

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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者