アルミニウムに無色アルマイト皮膜を施した場合、基本的には無色アルマイトの皮膜は無色なのですが、実際には、色調が素地の時とは違います。

なぜ、色調が違うかというと、アルマイトの前処理でエッチングをおこない表面を溶解させる影響もありますが、アルミニウムの材質によって、アルミニウム合金中に含有する金属の影響を受けて、アルマイト皮膜を生成させる際の電解により自然発色して色調が変わる場合もあります。

今回は、弊社で無色アルマイト5μmを施した製品の色調を材質別にご紹介していきますが、実際に弊社で処理している製品を撮影していますので、全部の材質をご紹介できていませんが、追加できる材質があった際には、順次追加していきます。

1.A1070素材の無色アルマイト後外観

アルミニウムA1070に、無色アルマイトを施すと下記の写真のような仕上がりになります。
前処理は、脱脂・エッチング・脱スマットのみの工程となり、特殊な前処理などは含まれていません。

A1070は、純アルミ系の材料で、他のアルミニウム合金のように添加元素を意図的に加えて強度を上げることをおこなっていないため、アルミニウム素材の中でもやわらかい材料になります。一般的にアルミニウムの純度が高いほど強度は低くなり加工性や表面処理性などには優れ、高純度のアルミニウムであることから、他のアルミニウム合金と比べても耐食性が高いです。

A1070の化学成分

Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ga,V,Ni
B,Zr等
Ti Al
A1070 0.2以下 0.25以下 0.04以下 0.03以下 0.03以下 0.04以下 0.05以下 0.03以下 残部

2.A2017素材の無色アルマイト後外観

アルミニウムA2017に、無色アルマイトを施すと下記の写真のような仕上がりになります。
こちらもA1070と同じ前処理工程をおこなってアルマイトしています。

A2017は切削加工性、強度に優れた熱処理型のアルミ合金で、ジュラルミンの名称でも知られます。Cu(銅)を含むアルミニウム合金のため、アルマイト性はあまり良くありません。

アルマイトの前処理で過度なスマットが発生するため、スマット除去を確実におこなう必要があります。また、含有する化学成分によりアルマイト電解で自然発色します。

A2017の化学成分

Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ga,V,Ni
B,Zr等
Ti Al
A2017 0.2
~0.8
0.7以下 3.5
~4.5
0.4
~1.0
0.4
~0.8
0.1以下 0.25以下 0.15以下 残部

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.A5052素材の無色アルマイト後外観

アルミニウムA5052に、無色アルマイトを施すと下記の写真のような仕上がりになります。

5000系は主成分に合金元素としてMgが添加されているAl-Mg系の合金になります。Mgは耐孔食性向上に寄与し、酸化皮膜の形成を促進させる作用があるので、耐食性にも非常に優れたアルミとなります。

A5052の化学成分

Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ga,V,Ni
B,Zr等
Ti Al
A5052 0.25以下 0.4以下 0.1以下 0.1以下 2.2
〜2.8
0.15
〜0.35
0.1以下 残部

4.A5056素材の無色アルマイト後外観

アルミニウムA5056に、無色アルマイトを施すと下記の写真のような仕上がりになります。

A5056はA5000系のアルミニウムのため、Mgとの合金であり、耐食性や強度が高く加工性に優れた汎用性の高い材料で、アルマイトの仕上がりもいいですが、溶接性に劣ります。

A5056の化学成分

Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ga,V,Ni
B,Zr等
Ti Al
A5056 0.3以下 0.4以下 0.1以下 0.05
~0.2
4.5〜5.6 0.05
〜0.2
0.1以下 残部

A5052とA5056のアルマイト性については、下記の記事にてご紹介していますので、ご参考にしてください。

A5052とA5056のアルマイト性の違いはあるの!?

5.A6063素材の無色アルマイト後外観

アルミニウムA6063に、無色アルマイトを施すと下記の写真のような仕上がりになります。

主成分に合金元素として、MgとSiが添加されている合金で、強度・耐食性に優れ、構造材料としても使われるアルミニウム合金になります。

A6063の化学成分

Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ga,V,Ni
B,Zr等
Ti Al
A6063 0.2
~0.6
0.35以下 0.1以下 0.1以下 0.45
~0.9
0.1以下 0.1以下 0.1以下 残部

溶接には弱く、アルミの長所でもあるはずの熱伝導率の関係で、溶接個所だけでなく周辺部位まで熱による強度低下が起きてしまうため、ボルトやナット、ビス、リベットなどの機械的な接合が用いられることの多い材料です。 応力腐食割れにも強く、押し出し性にも優れるため、サッシなどの建築材料にも使われます。

6.A7075素材の無色アルマイト後外観

アルミニウムA7075に、無色アルマイトを施すと下記の写真のような仕上がりになります。

A7075は、Al-Zn-Mg-Cu系のアルミ合金です。A7075では、ZnとMgに加え、Cuを添加することで、アルミ合金の中でもトップクラスの強度を持つ材料の一つです。

A7075は超々ジュラルミンとも呼ばれ、強度はありますが、その反面、応力腐食割れや耐食性については使用環境に留意する必要があります。

使用用途としては、航空機、人工衛星、ロケット、自動車部品、溶接構造材や各種金型などの工業用部品、スキー板や金属バットなどのスポーツ用品、自転車、ロボットなどに使われる材料です。
また、含有する化学成分によりアルマイト電解で自然発色します。

A7075の化学成分

Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ga,V,Ni
B,Zr等
Ti Al
A7075 0.4以下 0.5以下 1.2~2.0 0.3以下 2.1
~2.9
0.18
~0.28
5.1
~6.1
0.2以下 残部

7.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者