A5052とA5056では、どちらの方がアルマイトに適しているのか?
同じA5000系の素材だから、そんなに変わらないのでは?
A5052とA5056の主な違いは、含有しているマグネシウムの量が違います。
化学成分
A5052 JIS H4000:2022引用
Si | Fe | Cu | Mn | Mg | Cr | Zn | Al |
0.25 | 0.4 | 0.1 | 0.1 | 2.2〜2.8 | 0.15〜0.35 | 0.1 | 残部 |
A5056
Si | Fe | Cu | Mn | Mg | Cr | Zn | Al |
0.3 | 0.4 | 0.1 | 0.05〜0.2 | 4.5〜5.6 | 0.05〜0.2 | 0.1 | 残部 |
上記の表のように、A5052はA5000系のアルミニウム合金の中で中程度のマグネシウム含有量になっていて、A5056の方がマグネシウムの含有量が多いことがわかります。
このマグネシウムの含有量の違いによって、アルマイト性に違いが出るのか?ですが、全く何も影響が出ないわけではありません。
1.A5052とA5056の物理的性質の違い
A5052とA5056の物理的性質を、下記の表にしてみました。
材質 | 質別 | 密度(20℃) (mg/㎥) |
溶解温度範囲 (℃) |
熱伝導率(25℃) kW/(m・℃) |
導電率(20℃) (IACS,%) |
A5052 | 全質別平均 | 2.68 | 607〜649 | 0.14 | 35 |
A5056 | H38 | 2.64 | 568〜638 | 0.12 | 29 |
質別については、以前の記事でご紹介していますので、ご参考にしてください。
物理的性質の違いを見てみても、導電率に多少の違いはありますが、アルマイト性に大きな違いが出るレベルではありません。
2.A5052とA5056のアルマイト外観
A5052とA5056のアルミニウムに、無色のアルマイトをしてみると色調に違いがあるのか?ですが、実際にアルマイトを施してみたものが下記の写真になります。
A502の平面部は、素材のままの状態で切削された面ではありませんが、見た目では、ほとんど違いがないレベルの外観かと思います。
違いがでる場合は、切削時の表面の粗さが違ったり、アルマイト前に機械的前処理としてヘアーライン加工やサンドブラストなどを施している場合には見た目が違ってきますが、これはアルマイトが要因ではありません。
3.A5052とA5056のアルマイト膜厚
A5052とA5056を実際にアルマイトしてみた場合、どのように膜厚の変化があるのか?ですが、さほど大きく違いはありません。
下の表に、実際に無色アルマイトを施して膜厚を測定した結果を掲載しますが、ほとんど膜厚に違いはない状況ではあります。
寸法公差などの厳しい製品で、寸法が外れてしまうという場合もよく聞きますが、その場合には、前処理のエッチングなどによる寸法の減少量が把握されていないために、寸法の増減が適切におこなえず寸法公差から外れてしまっているという場合が多いかと思います。
以前の記事で、『アルマイト加工した際の、処理後の寸法変化』についても、解説していますので、ご参考にしてください。
また、鉄にメッキする場合や、アルミニウムにメッキした場合には、アルマイトとは違う寸法の変化を起こしますので、そちらについては、下記のリンクをご参考にしてください。
アルミニウムを溶解させるエッチング工程の溶解量については、アルマイト業者・メッキ業者毎に違いがありますので、表面処理をご依頼される業者さんにヒアリングして、表面処理前の寸法を調整してから表面処理を施すことをお勧めします。
すでに加工が仕上がってしまっているという場合には、公差穴をマスキングなどして対応できるのか?なども視野に入れて検討されると良いかと思います。
4.動画で解説しています。
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