アルミニウムの切削加工品に止まり穴やタップがあるのですが、止まり穴やネジ部のタップ部分にもアルマイト処理はされますか?と聞かれることがあります。
止まり穴でも、アルマイト液が入り、電解することである程度は止まり穴にもアルマイト皮膜は生成します。ある程度というのは、止まり穴の直径と穴の深さ、そしてラッキングする際の方向によって違いがでてしまいます。
ネジ部のタップ部分についても似ていますが、ネジ部が貫通しているのか?止まり穴になったネジ部なのかで違います。
1.貫通した穴・ネジ部にアルマイトは生成するのか!?
アルマイト皮膜は、基本的に液が流動し、電解がおこなうことができる状態であれば生成します。
パイプのように貫通した形状であれば、外側だけでなく内面にもアルマイト皮膜は生成するのです。
こちらの写真は、ホームセンターで最近販売されているアルミフレームですが標準は無色のアルマイトが施されていますが、参考になるようにカラーアルマイトを施してみました。
アルミフレームの内面にも、カラーアルマイトが施されアルマイト皮膜が生成していることが明確にわかります。
このような形状の場合、多少パイプ径が細くなってもアルマイト皮膜は生成します。
これと同じように、貫通したネジ穴であればアルマイト皮膜は生成するのです。
ですが、非常に小さなネジ穴の場合、タップ部分の凹凸にアルマイト電解時の気泡が張り付いて、気泡が除去できない場合、その部分はアルマイト液が接触していないため、アルマイト皮膜が生成しないというような現象が起こる場合があります。 液をエアーや液流動でよく攪拌し、気泡の付着を防止することでアルマイト皮膜が正常に生成します。
2.止まり穴・ネジ穴に、アルマイト皮膜は生成するのか!?
止まり穴の場合、非常に厄介な状況になります。
製品のどの方向に止まり穴があるのか?によって、ラッキングする際に止まり穴が、どの方向を向くかでアルマイト皮膜の生成の有無が左右されます。
2.1.止まり穴が上を向いている場合
この場合、アルマイト液が穴の中まで入り、アルマイト電解時に発生する気泡も液中に拡散されていきますので、アルマイト皮膜が生成しやすくなります。
ですが、液流動やエアー攪拌による気泡の除去は困難なため、アルマイト皮膜はできていてもアルマイト皮膜が部分的に気泡により阻害されている場合があります。
2.2.止まり穴が横を向いている場合
止まり穴が横を向いている場合は、止まり穴の直径と同じぐらいの深さまではアルマイト皮膜が生成します。
例えば、直径6ミリの穴の場合、深さ6ミリぐらいまではアルマイト皮膜が生成します。
ですが、先ほどと同じように気泡が付着している場合は部分的に正常な皮膜にはなっていない可能性があります。
2.3.止まり穴が下を向いている場合
止まり穴が下を向いている場合は、アルマイト液が穴の内部にまでは届かなくなります。
イメージしやすいのが、コップを水の中に逆さまにして沈めると、空気が内部に入って途中までしか、水が入っていない状態になるかと思います。
これと同じ現象がアルマイト液中で起こります。そのため、アルマイト液が奥まで入っていないため、電解をかけてもアルマイト皮膜が生成しません。
また、アルマイト電解時にはアルミニウム表面で水素ガスが発生します。その水素ガスが止まり穴の中に時間と共に溜まってきます。
途中まで入っていたアルマイト液も、空気と水素ガスが穴の中に溜まりアルマイト液を外へ押し出してきてしまいます。
そうすると真横を向けた時は、直径と同じぐらいまでアルマイト皮膜が生成しましたが、そこまでアルマイト皮膜が生成しない状態になります。
貫通していない穴やネジ部は、ほかの部分に比べて皮膜が薄くなる傾向があります。
そのため、公差穴の場合入り口付近は正常な膜厚が確保されていても、穴の奥にいくほど皮膜の厚さは薄くなりますので、ご注意ください。
3.止まり穴・ネジ穴の、アルマイト皮膜は染色できるのか!?
止まり穴やネジ部には、液が入りにくいのはご説明させていただきましたが、アルマイト皮膜が生成していれば染色は可能なのですが、皮膜厚が確保できていない場合、色調が薄くなる傾向にあります。
皮膜の中に染料が入って、その染料の量によってカラーアルマイトの色調が決まるため、皮膜の厚さに依存します。
また、止まり穴などにはアルマイト電解時のアルマイト液が残存していることが多く、水洗がしっかりとおこなわれていないと、染色中にアルマイト液が穴の中から出てきて液ダレなどが発生してしまうこともありますので、アルマイト電解後の水洗を十分にする必要があります。
4.動画で解説しています。
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