以前にホームページのお問い合わせフォームよりお話をいただいた案件で、穴が空いたアルミ(A5052)の板をApple社のMacPro風に仕上げたいとご相談がありました。
MacPro風ということですが、本物のMacProを見たことはなかったのですが、添付ファイルでMacProの写真も一緒に添付してくださっていたので、外観を把握することができました。
また、お客様が調べたところ、外装は『サテン仕上げ』と表記されているようで、見た感じでブラスト処理後にアルマイトをしているように見えるとのことで、写真を確認したところ、確かにブラスト処理をしてからアルマイトを施している感じの外観です。
ですが、ブラストにも色々あり弊社のサンドブラストで近い感じが出るのか?
また、切削目を消した状態でアルマイトをして、それなりの光沢感を残せるのか?が課題になりました。
化学研磨を施すことで光沢は出せるのですが、弊社の化学研磨のタンクは小物用のタンクで大きくありません。
今回の製品サイズは、420×220 t20~30ほどあるとのことで、タンクに入らないため化学研磨は使えません。
なんとか、類似した外観を作れる方法を探します。
1.仕上がりを検討する
サンドブラストして、アルマイトするだけで、MacPro風に仕上げる方法を検討します。
サンドブラストは、仕上がりを考えると必須条件になります。
もちろん、アルマイトも同様です。
サンドブラストを投射することで梨地面に素材がなってしまいますので、梨地では光沢感が損なわれてしまいます。
では、どうしたら良いか!?
サンドブラストで粗す表面粗さを浅くします。
表面粗さの食い込みが深く、粗いほど梨地が強くなります。
ですので、サンドブラストで梨地目は付けますが、投射距離、投射圧力を弱めにして表面の粗さを出さないようにします。
その後に無色アルマイトを施すことでMacProに類似した外観になるのではないか?と考えました。
ですが、実際にやったことはないためテストが必要です。
いきなり製品で加工して似ていなかったら大変ですので、テストしてみて類似していれば問題ないかと思います。
2.テストサンプルの作成
今回の製品は2つを処理するのですが、再加工はできないため、端材をお借りしてサンプルの作成をおこないました。
サンドブラストを投射してアルマイトを施します。
梨地の度合い、シルバーの色調を写真で確認はしていますが、写真と現物は違う可能性もあるので、私が保有しているMacBook(シルバー)を参考にして色調などを合わせてみました。
実際、MacBookとMacProが同じ外観なのかも、ちょっとわかりませんが、それしか方法がありませんでした。
どうでしょうか?
似ている感じになっているのではないでしょうか?
拡大した画像が下記の写真になります。
この写真をお客様にお送りさせていただき、外観を確認していただきました。
上面になっている部分は、素材の黒皮部分、左側面は切断面、手前側部分は切削面の状態だったサンプルですので、類似しているか確認するにはちょうど良いサンプルになりました。
3.製品を実際にブラスト後アルマイト加工
テストサンプルをお客様に確認していただき、実際に処理することが決まりました。
実際に処理する製品が、こちら!!
お客様が実際に、削っている製品の写真を送ってくださいました。
これをMacPro風に仕上がるわけです。
というか、これ、MacProのケースそっくりですね。
遊びで作ったそうなので、外観が似ていればOKという指示までいただきました。
こういう遊び心ある製品も、やる気が断然増しますので、お受けしています。
似ていればOKと言われたのですが、ここまで来ると更に似せたくなるもので、全力で作成に取り掛かりました。
サンドブラストを遠目からゆっくりと時間をかけて満遍なく投射し、全面処理します。サンドブラストの打ち損じがないかを確認し、ランキングしてアルマイト工程へ入ります。
前処理中が下記の写真になります。
食い込んだ汚れなどを除去し、表面を綺麗にしていきます。
その後に、アルマイト槽で電解し水で綺麗にアルマイト液を洗い流します。
封孔処理をおこない、完成した製品が下記の写真になります。
いかがでしょう?
似ていますか?
光沢感も、そこそこ残しつつ切削目はできるだけ消してサンドブラストを施し、アルマイト加工したものになります。
こんな風に遊び心満載な、ご相談もお受けしておりますので、表面処理でお困りの際には、下記よりご相談ください。