個人の方から、メールにてご相談があり内容は
“ご相談したい内容ですが、今から35年ほど前にアメリカのassociated社というラジコンメーカーが販売したRC10という車のシャーシになります。
手元にある物はebeyというアメリカのオークションで手に入れました。使用感があり傷だらけでアルマイトも色褪せがあります。傷の部分はある程度ペーパーを掛けてみましたが深い傷が残ってしまいました。現状から剥離、再アルマイトは可能でしょうか?”
ということでした。
写真を送っていただいたので、写真で確認する限りでは、オレンジ色のアルマイトが施されているようで、このアルマイトを剥離して、再加工することで傷は除去できませんが、全体にオレンジ色のアルマイトを施すことは可能ですとお伝えし、再アルマイトのご依頼をいただきました。
後日、部品が届きましたので箱を開封し状態を確認していきます。
1.状態の確認
届いた部品を確認していくと、大きな部品の方はペーパーが欠けてはありますが、アルマイト皮膜が残っている状態です。
小さい方の部品を確認する際に、光沢がアルマイトの光沢と違う色調であるように見え、触ってみるとアルミニウムの触感とは違うことがわかりました。
※プロの目、プロの感覚では見た目や触った感じで、確定はできませんが何か違うということがわかります。
1つしかない部品を確実の仕上げるために、部品表面の元素分析をおこない現状を確認します。
光沢のあるオレンジ部分とペーパーがかけてあるオレンジ部分を比較して何か違いがあるのかを確認してみました。
光沢のある部分 | ペーパーがかけてある部分 |
※画像をクリックすると大きい画像が見れます。
光沢のある部分の分析結果をみるとアルミニウムの検出がされておらず、
炭素、酸素、水素が検出されています。
通常のアルマイト皮膜の場合、ペーパーがかけてある部分の分析結果のように、
酸素とアルミニウムが検出されることが正常になります。
光沢のある部分では有機物が検出されていることから、塗装がされていることが考えられます。
そのため、お客様にご連絡させていただき、サンドブラストで除去することを提案させていただきましたが、サンドブラストを投射してしまうと、部品表面は梨地調になり、再アルマイト後はつや消しのアルマイトになってしまうことも含めてご相談し、ご了承を頂きましたので、作業を進めることにしました。
2. サンドブラストで塗膜の剥離
サンドブラストで塗膜を除去し、穴の内面やエッジ部分などを丁寧に剥離していきます。
板厚も比較的薄めなので、近くから強くサンドブラストを投射してしまうと反ってしまう可能性があるので、距離を離して時間をかけて塗装を剥離していきます。
何度か、ブラスト機から部品を取り出し目視にて塗膜の残りがないか?確認しながら投射していきます。
完全に塗膜が除去できた状態が下記の写真になります。
この状態の時に、サンドブラストによる表面の粗さにバラツキがあると、アルマイトの際にムラになって、見えてしまいますので表面の粗さを均一にしておくことがとても大切です。
ブラストによるムラについては、下記の記事でもご紹介していますので、ご参考にしてください。
サンドブラスト後にアルマイトしたら表面にムラが発生してしまった
3. 再アルマイト
サンドブラストで塗膜は除去できていますが、穴の中のアルマイト皮膜が完全に除去できたのかはわかりませんので、アルマイトのためのラッキングをする前に、苛性ソーダにてアルマイト皮膜の剥離を事前におこなっておきます。
これで、完全に塗装もアルマイト皮膜もない状態になり、アルミニウムムクの状態になりましたので、ラッキングしてアルマイト工程へと進めていきます。
アルマイト工程については、下記の記事で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
『アルマイト工程は、どんな工程なのか知りたい』と相談がありました。
各工程を通常通り処理して、完成した状態が下記の写真になります。
非常に深い傷は残ってしまいますが、ペーパーをかけた筋目はサンドブラストで消え、均一な梨地調のオレンジ色アルマイトを施すことができました。
こちらの素材には腐食痕などがなかったため、再加工しても綺麗に仕上がっています。
腐食痕などが出ている場合には、アルマイト後も腐食痕が見える場合がありますので、そのような場合には注意が必要です。
今回、完成品をお客様にお送りさせていただいた後、Instagramに投稿してくださいましたので、もしよろしければご覧いただけたらと思います。
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