JIS H 0404-1988では、電気めっき(自己触媒型の無電解めっきを含む)の記号による表示方法が規定されています。

めっきの記号による表示方法は、規定する記号を用いて1項に示す順序による。ただし、当分の間、【1α】に示す順序によってもよい。
なお、特に表示の必要がない記号は、省略してもよい。

1.電気めっきの記号による表示方法

注意事項
(注1)電気めっき又は無電解めっきを表す記号。ただし、電気めっきと無電解めっきとによってめっき層が構成されている場合には、最終めっきを表す記号。
(注2)ハイフン
(注3)斜線
(注4)多層めっきの場合には、素地に近いめっきの構成の順に左から右へコンマを付して表示する。
(注5)コロン

例1:Ep-Fe/Cu20,Ni25b,Cr0.1r/:A
(電気めっき、鉄鋼素地上、銅めっき20μm以上、光沢ニッケルめっき25μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上、腐食性の強い屋外での使用)

例2:Ep-Fe/Zn15/CM2:B
(電気めっき、鉄鋼素地上、亜鉛めっき15μm以上、有色クロメート処理、通常の屋外での使用)

例3:Ep-Cu/Ni5b,Cr0.1r/D
(電気めっき、銅合金素地上、電気ニッケルめっき5μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上、通常の屋内での使用)

例4:Ep-Fe/Elp-Ni15,ICr20/
(最終めっきが電気めっき、鉄鋼素地、無電解ニッケルめっき15μm以上、工業用クロムめっき(硬質クロムめっき)20μm以上)

【1α】

例1:Ep-Fe/Zn[2]/CM2:2
(電気めっき、鉄鋼素地、亜鉛めっき2級、有色クロメート、湿度の高い屋内での使用)

例2:Ep-Cu/Cr[3]/:B
(電気めっき、銅合金素地、ニッケル・クロム系めっき3級、通常の屋外での使用)

2.めっきを表す記号

電気めっきを表す記号は、EpまたはSPLEとする。ただし無電解めっきを表す記号は、ELpまたはSPLELとする。

3.素地の種類を表す記号

素地の種類を表す記号は、下の例のように示すか、素地についてさらに詳しく示す必要がある場合には、素地記号に※1印を付け、注として日本工業規格に定められた材質記号、※及びJIS B0122(加工方法記号)に定められた加工記号及び条件を付記する。

素地 記号
鉄、鋼及びそれらの合金 Fe
銅及びその合金 Cu
亜鉛及びその合金 Zn
アルミニウム及びその合金 Al
マグネシウム及びその合金 Mg
プラスチック PL
セラミックス CE

例1:Cu※1/Ni5b,Cr0.1r/
注※1 めっきに先立ち素地黄銅にヘアライン加工を施すこと。

例2:Fe※1/Au2μm/
注※1 SUS304ステンレス鋼

例3:PL※1/Cu10b,Ni15b,Cr0.1mp/
注※1 ABS樹脂

4.めっきの種類を表す記号

めっきの種類は、元素記号による。合金のめっきの場合には、合金を構成している主な元素の元素記号をハイフンで結ぶ。なお、特に主要な合金元素記号の組成を示す場合には、その質量パーセントの数値を、元素記号の次に( )を付けて示すことができる。

また、工業用クロムめっき、装飾用金めっきなどについては、それぞれの日本工業規格で定められた記号を元素記号の前に付けることができる。
さらに特殊な使用目的については、※2印を付し、注として付記する。

例1:Cu10/Ni10s,Cr0.1r
(銅めっき10μm以上、半光沢ニッケルめっき10μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上)

例2:Zn-Ni15
(亜鉛ニッケル合金めっき15μm以上)

例3:Au(75)-Cu5
(金75%-銅合金(18K)めっき5μm以上)

例4:ICr50
(工業用クロムめっき50μm以上)

例5:E-Au2
(工業用金めっき2μm以上)

5.めっきの厚さを表す記号

めっき厚さは、有効面での最小厚さをμm単位で示した数字とする。

例:Cu10,Ni15d,Cr0.1mp
(銅めっき10μm以上、二層ニッケルめっき15μm以上、マイクロポーラスクロムめっき0.1μm以上)

記号 めっき厚さの例
10 10μm
3 3μm
0.1 0.1μm

6.めっきの厚さによる等級を表す記号

めっきの規格で、めっき厚さによる等級分けを行っている場合には、等級分けによってめっき記号及び厚さを示す。

例:鉄鋼素地上のニッケルめっきの場合

等級 記号 Ni又はCu+Niの厚さ μm
1級 Ep-Fe/Ni[1] 3以上
2級 Ep-Fe/Ni[2] 5以上
3級 Ep-Fe/Ni[3] 10以上

7.めっきのタイプを表す記号

めっきのタイプ及びその記号は、下記の表のとおりとする。

表:めっきのタイプ及びその記号

めっきのタイプ 記号 参考(めっきの種類)
光沢めっき b 銅めっき、ニッケルめっき、クロムめっき、
金めっき、銀めっき、合金めっきなど
半光沢めっき S
ビロード状めっき v
非平滑めっき N
無光沢めっき M
複合めっき cp
黒色めっき bk
二層めっき d ニッケルめっきなど
三層めっき t
普通めっき r クロムめっき
マイクロポーラスめっき mp
マイクロクラックめっき mc
クラックフリーめっき cf

例:Cu10b,Ni20t,Cr0.5mc
(光沢銅めっき10μm以上、三層ニッケルめっき20μm以上、マイクロクラッククロムめっき0.5μm以上)

8.後処理を表す記号

後処理を表す記号は、下記の表のとおりとする。
2種類以上の後処理を行う場合には、処理操作の順または素地に近い順に左から右に各記号をコンマで区切って示す。
なお、処理条件を示す場合及び下記表以外の特殊な後処理を示す場合には、*4印を付け、注として付記する。

表:後処理を表す記号

後処理 記号
水素除去のベーキング HB
拡散熱処理 DH
光沢クロメート処理 CM1
有色クロメート処理 CM2
塗装 PA
着色 CL
変色防止処理 AT

例:Fe*1/Zn 10/HB,CM1,PA*4
注*1めっきに先立ち素地鉄鋼はHAR(応力除去焼きなまし)を施すこと。
*4透明ウレタン塗装仕上げを施すこと。
(鉄鋼素地、熱処理、亜鉛めっき10μm以上、ベーキング、光沢クロメート処理、塗装)

9.使用環境を表す記号

装飾、防食などの目的でめっき製品を使用する場合、その使用環境を下記の表のとおりに区分し、記号で示す。
これ以外の特殊な環境での使用に対しては、*5を付け、注として付記する。

表 使用環境、使用環境条件および記号

使用環境 使用環境条件 記号
A 腐食性の強い屋外環境 A 海浜、工業地域など
B 通常の屋外環境 B 田園、住宅地域など
C 湿度の高い屋内環境 C 浴室、厨房など
D 通常の屋内環境 D 住宅、事務所など

JIS H 0404-1998より抜粋

この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者