ホームページのお問い合わせフォームより『自転車のサドルポストをブルーアルマイトにしたい』とご相談がありました。
サドルポストというのは、自転車に乗った際に座るサドルと呼ばれる椅子が乗るパイプのことをサドルポストと呼ぶそうです。
そのサドルポストをブルーアルマイトにしたいということですが、その部分がアルミニウムでできているのか?人が座るサドルを支えるためのポストになるので、強度的にアルミニウムなのか?その辺りも気になりましたので、一度送っていただき、現物を確認してからお返事をさせていただくことにしました。
アルミニウムであれば、アルマイトは可能ではあるのですが、材質なども気になりますので、
仕上がりをきれいに仕上げるために、事前に確認する必要があります。
1.サドルポストの材質確認
送っていただいたサドルポストを持った感じの軽さ、これはアルミニウムの軽さです。
自転車などで使われる材質なのかはわかりませんが、軽さだけでは判断できない部分もあり材質の確認は気を付けなければなりません。今では、部品によってはマグネシウムなども使われることもあるので注意が必要です。
材質を間違えていると、
・ご希望にお応えできない。
・現在、施されている表面処理を剥離できない。
・剥離できたとしても、再加工できない。
など、後で不具合が発生してしまうこともあります。
今回の部品はアルミニウムであることが判断できましたので、現在施されているアルマイトを剥離します。
現在施されているアルマイトは、アルミニウムのパイプにサンドブラストを施して、その後に化学研磨し、無色のアルマイトが施されています。
サンドブラストを投射することで、アルミニウムパイプについている切削目やロール目などが消されています。ですがサンドブラストを施すと梨地状態になり、アルマイトを施した際にツヤのない仕上がりになってしまい、高級感がないため化学研磨を施してから無色のアルマイトを施してあるのだろうと思います。
この状態のものを剥離すると、化学研磨が施されているので再加工しても光沢が損なわれる可能性は少ないため、ブルーアルマイトの際には化学研磨を再度施す必要もなさそうです。
また、この仕上がり具合からして、材質もアルマイト性の良い材質であることがわかります。
2.ブルーアルマイトの色調
お客様からお問い合わせのあった際に、ブルーアルマイトの色調を色見本の一番右側の色のように、できる限り淡い状態にしてほしいという、ご要望も受けていましたので色調も淡く仕上げます。
アルマイトの染色は染料で染色するため、紫外線を長期に渡り浴びる部品などの場合は退色に注意しなければなりません。
アルマイト用の染料は有機染料と言って、紫外線を浴び続けると色が退色していきます。
ちょうど、Tシャツなどを天日干ししておくと、色が抜けてしまうのと同じです。
紫外線により、染料の成分が分解されて色調が薄くなってしまうのです。
そのため、紫外線を浴び続ける部品の場合は、濃いめにする方が退色が遅くなります。
今回、そのお話もお伝えさせていただき、淡めをご希望でしたので淡めに仕上げることにしました。
3.ブルーアルマイト加工
剥離が完了した時点で、過度なスマットの発生もなくシルバー調でもあったので、A5000系またはA6000系の素材ではないかと判断がつきましたので、アルマイト皮膜を10μmほど施すようにします。
染色の濃さが濃い場合には、アルマイト皮膜の厚さも必要なのですが、今回は淡い色なので厚くする必要はありませんが、なぜ、10μmかというと、自転車という用途でもあるため屋外で使用されることを想定して、腐食を防止するための厚さです。
また、パイプの外径部分は外観となるため、アルマイトの接点を取ることはできないかと思いますので、パイプの内面で接点を取り電気を流すようにします。
そうすることで、外径部分には全てアルマイト皮膜が施され腐食の防止につながります。
ラッキングが完了したら、アルマイトラインへ投入しアルマイトを施します。
アルマイト皮膜の生成が完了したら、染色なのですが非常に淡い色に仕上げるため、自動機で、染色する濃さでは濃くなり過ぎます。
どうしても、機械が液に入れ、染色時間を経過後に染色液から取り出す、この作業だけでも数十秒かかってしまいます。
今回の色調は淡いため、染色は自動ではおこなえるレベルではありません。
そこで、手作業でおこなうようにし、染色時間を5秒とし瞬時に染色します。
建浴してある染料の濃度が薄い場合には、自動でもできますが弊社で建浴してある染料の濃度では自動処理は難しい状態だったのです。
5秒間染色し、仕上げたブルーアルマイトが、下記の写真になります。
少し濃いような気がします。
できる限りお客様の色調の色に近づけたいと思いますので、お客様に一度この写真をお送りして、色調をご確認いただく方がよさそうですので、ご確認をしていただきました。
やはり、もう少し薄い方が良いということで、
再度アルマイトをやり直し、染色時間をさらに短くします。
染色時間が短くなると、染色が部品全体に均一にできない場合もあるので染色する際にコツが必要になります。
全体が同時に染色液に入ることが必要であり、接点の隙間などにもしっかりと染色液が入ることなど工夫が必要です。
再加工した際の染色時間は、2秒間です。
非常に短い時間ですので、染色ムラなどが出ないように慎重にスピーディに染色する必要があります。
2秒の染色で封孔処理を施し、完成した状態になります。
アルマイト皮膜の厚さも10μm施してありますので、耐腐食性にも強い状態になっていますが、非常に淡い色なので紫外線が常時照射され続けると退色の恐れがありますので、注意が必要です。
4.動画で解説しています。
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