以前に、お問い合わせフォームより、
『カラーアルマイトの色が揃わなくて困っている』というご相談がありました。
内容としては、下記のようになります。
自社でのカラーアルマイトに挑戦しております。
現在A5052でt5×50×50の左右対称2部品への同時処理をおこなっておりますが、左右の色に違いが出ており困っています。形状は対象なのですが、1か所ずつ穴が開いており、一方は座繰り貫通で、もう一方はM2の止まり穴です。M2の方が色が薄くなってしまいます。どちらもチタンの針金治具を爪楊枝で穴に圧入し固定しております。
同時ではなく別々に処理すべきでしょうか?
止まり穴の製品は処理が難しいとよく聞くのですが、何か有効な対策はございますか?
座繰り穴製品、止まり穴製品で別々に処理し、止まり穴製品の処理時間を長くするのは有効でしょうか?
色を揃えるためのアドバイスを頂きたいです。
ということだったのですが、通常、このようなご相談にはお応えしないのかもしれませんが、お困りのようでしたので、弊社でお伝えできることは回答させていただきました。
まず、どのような設備でされているのかも重要なポイントとなるのですが、
『簡易的な設備でされているのでしょうか?』とお尋ねしたところ、
市販のアルマイトキットを使用してアルマイト加工をされているとのことでしたので、それを使用して、色を揃えるための方法をお伝えしましたので、今回、記事にもさせていただきました。
1.同時にアルマイトしても、色が揃わない理由
アルマイトを同時に処理をしたとしても、色が揃わないことはあります。
どんな時に色が揃わないかというと
・アルマイト加工中に、接点がズレてしまい皮膜厚が確保されていない。
・アルミニウム材質が違う。
・アルミニウムの表面状態が違う。
というような可能性があります。
ですが、今回の場合は、『アルマイト加工中に、接点がズレてしまい皮膜厚が確保されていない。』というのが一番の要因になっているかと思います。
チタンの針金を治具として使って、M2の穴の中にチタンの針金を爪楊枝を使って差し込み、固定しているようですが、この状態で確実な接点が取れているとは判断しにくいです。
M2の穴は止まり穴になっているとメール本文にも記載されていましたが、止まり穴を塞いでしまうと、電解中などに中の空気が膨張して爪楊枝を押し出してきている可能性があります。
電解中は、アルミニウムが発熱しますので触れている空気も熱を帯びてしまうのです。
2個の部品を同時にアルマイトして、片方のみ接点がズレてしまうとアルマイト皮膜の厚さが揃わないため、膜厚の厚い方は濃い色に染色され、膜厚の薄い方は薄い色になってしまいます。
また、アルマイト電解中はアルミニウム表面が発熱して温度が上昇しますので、液攪拌をしてアルミニウム表面の熱をアルマイト液で冷却しなければなりません。
冷却しないと、焦げてしまったり、アルマイト皮膜やアルミニウム表面が溶けてしまったり、接点部分がスパークしてしまったりすることがあります。
そのため、製品を揺動・液を流動・エアー攪拌などを用いて、アルミニウム表面の熱を除去することはアルマイトラインではおこなっています。
2.接点がズレないために
アルマイト電解中に接点がズレないために、どのようにしたらよいか!?ですが、アルミ製の針金で縛り上げて固定したり、チタン製の治具で掴む・弾くように接点を取ると良いです。
外径部を掴む | 止まり穴タップを弾く |
穴の中だから押し込んでおけば大丈夫という感じですと、液を攪拌したり、製品を揺動させたりした場合に、製品と給電している治具との接点が動いてしまう可能性があります。
以前の記事で、アルマイトの接点の取り方についても書いていますのでご参考にしてください。
hhttps://koiketechno.co.jp/report_20181008
3.止まり穴の製品は処理が難しい!?
『止まり穴の製品は処理が難しい』と表面処理業者に言われることがあるかもしれません。
確かに、止まり穴のない製品と比べると処理は難しいです。
ですが、その難しいという意味は何なのか!?ですが、
止まり穴の部分は、アルマイト工程に入る際に穴の中に空気が存在しています。
また、切削時の油分なども中に入っている場合があります。
その製品をアルマイト工程の最初の工程にあたる脱脂工程に入れた場合、止まり穴の中に入っている空気や油によって、脱脂剤が止まり穴の中に入りにくい状態になってしまいます。
仮に脱脂剤が中に入っても、次の水洗工程で、水が止まり穴の中に入って脱脂剤を洗い流せない可能性もあります。
このように、止まり穴の中に液が入らないということは正常に表面処理が施せない状態になります。
そのため、手作業でおこなえるアルマイトラインでは手作業で止まり穴の中を洗浄したり、その他のラインでは、超音波洗浄、液攪拌などを工夫して止まり穴の洗浄をおこなっています。
通常の貫通したような穴であれば、ここまで気を使わなくても大丈夫なのですが、止まり穴の場合には、必要以上に気を使います。
また、止まり穴の中が確実に綺麗に洗浄できたのか?の確認の方法がないのです。
そのため、『止まり穴のある製品の処理が難しい』という表現になっているのだと思います。
止まり穴などへのアルマイト処理については、以前の記事でもご紹介していますので、ご参考にしてください。
4.動画で解説しています。
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