鉄の赤錆が付着して、アルミの方まで腐食が始まってしまっているホイールスペーサーをアルマイトして欲しいというご相談がありました。
ホイールスペーサーを確認させていただくと、確かに赤錆が激しくでている部分があります。
これをなんとかある程度のレベルで綺麗に仕上げるのは、なかなか困難ではありますが、今回試行錯誤しながらアルマイト皮膜を生成させましたので、ご紹介していきたいと思います。
1.現状の確認
ホイールスペーサーの表面ですが、何か表面処理が施されていますが、テスターで導通を測ってみると通電するため、アルマイト皮膜ではないことがわかります。
塗装だとしても、通電はないため塗装ではないことも判断できます。
では、カッターナイフで軽く表面の皮膜を除去できるのか? 確認してみました。 カッターナイフの刃で表面を削ると、施されている皮膜が削りとれ、アルミの地肌が露出してきます。触った感じではツルツルとした皮膜なので、パラフィンを塗布してあるのかもしれません。
パラフィンであれば、脱脂してエッチング、脱スマットを施すことで除去は可能ですので、1個ずつ確認しながら除去していきます。
ただ、この赤錆は除去でいないためサンドブラストで除去することにしました。
2.サンドブラストで赤錆の除去
パラフィンの皮膜のようなものを、化学的に洗浄して除去した後、赤錆は残ってしまっていますので、サンドブラストで赤錆を除去して綺麗な表面にしていきます。
ですが、ここまで赤錆が酷いと、赤錆を除去してもアルミニウム素材に赤錆が食い込んでしまっていて、アルミニウムそのものを腐食させているかもしれません。
もしも、アルミニウムにまで到達していると、アルマイトを施した際に腐食痕が浮き出てきてしまう可能性もあります。
できる限り念入りに、サンドブラストを投射してアルミニウム表面を綺麗にしていきます。
サンドブラスト後の状態では、腐食痕は見えないレベルにまで除去できたかと思いますが、見えないからと言って腐食痕がないとは限りません。
今までにも、腐食痕が見えていなくても、アルマイトを施したら腐食痕が現れてきた事例がたくさんありますので、まだまだ安心はできないレベルです。
3.化学研磨後無色アルマイト加工
サンドブラストを施した表面のままでは、ザラザラとしていて傷がつきやすい表面のため、化学研磨を施し、ブラスト面の凹凸の凸部を丸くします。
化学研磨では、凸部の先端部を優先的に溶かす作用があるため、凸部が丸くなるのです。
そのため、凹凸はある表面でもツルッとした表面に仕上げることができます。
今回の工程は、下記写真のようになります。
サンドブラストを投射したことにより、腐食部分がわかりにくくなっていますが、
アルマイト工程が完了するまでは、どのようになるのかはわかりません。
腐食していた部分というのは、素材に食い込むように腐食が浸透していますので、ブラストで見えなくなったからと言って、腐食部がなくなったわけではないのです。
化学研磨やエッチングなどを施して、表面を溶解させることで見えなくなっていたものが見えてくる場合もあります。
また、アルマイトの電解により腐食部が目立ってくる場合もあります。
そのため、アルマイトが完了するまでは仕上がりがどのようになるのかはわかりません。
どうしても腐食痕を取り除きたい場合には、腐食痕の根元まで切削などで削り取る必要がありますが、腐食痕がどれぐらいの深さまで到達しているのかわからないため、非常に難しいのです。
写真だと綺麗に一瞬見えるかもしれません。
ですが、写真を拡大してみると腐食痕が出てきてしまっています。
表面 | 裏面 |
※写真をクリックすると拡大します。
サンドブラストだけでは除去しきれなかった腐食痕になります。
軽い腐食痕であれば、サンドブラストで除去可能ではありますが、やはり最初の写真のように酷い状態では、完全な除去は無理なことがこれでわかります。
今回の製品は、できるだけ綺麗にしたいというご要望でもあったため、これで完成とさせていただきましたが、ここまで錆びる前に、再加工する方が良いかとは思います。
また、鉄とアルミニウムが接触している場合、異種金属接触腐食と言う現象でアルミニウムが腐食してしまうこともありますので、ご注意ください。
4.動画で解説しています。
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