黒色アルマイトを剥離して青色アルマイトに付け替えをして欲しいというご依頼がありました。
現在、黒色アルマイトが施されていますので、まずは、この黒色アルマイトを剥離しなければなりません。
この黒色アルマイトは弊社でアルマイトをしたものではないので、どれぐらいの膜厚が施されているかはわからないため、膜厚を測定してから、どれぐらい剥離をおこなえば良いのかを把握します。
なぜ、先に膜厚測定をおこない確認するかというと、アルマイト皮膜は剥離すると素材の寸法が変化してしまうからです。
アルマイト皮膜は、アルミニウム素地に侵食するように生成する皮膜のため、アルマイト皮膜を剥離すると素材も溶けてしまうのです。
今回の製品はおよそ10μmの皮膜が施されていましたので、アルマイト皮膜を剥離すると外径の直径で20μm以上溶けることになります。寸法でいうと2/100以上が溶解します。
1.黒色アルマイト皮膜の剥離
黒色アルマイトの施されている製品をラッキングします。
内径が必要な製品のため、ラッキングは内径ではおこなわず横に開いている穴でラッキングします。
ラッキング時に治具の触れている部分のアルマイト皮膜は剥離されないため、小さく黒い跡が残ることになります。
ラッキングした製品を脱脂処理し、苛性ソーダ溶液の中に浸漬することでアルマイト皮膜が溶解され、アルマイト皮膜が剥がれていきます。
アルマイト皮膜が剥がれきると、アルミニウム素材が溶け出しますので、剥離が完了するタイミングを見ながらちょうど良いタイミングで苛性ソーダ溶液の中から引きあげます。
水で洗うと、若干、表面に黒色の染料が付着して残っている場合があります。これはスマットとして表面に付着していますので、次工程の脱スマットで除去されます。
ここで確認が必要なのは、アルマイトが完全に剥がれていない製品が混じっている場合もあります。この場合は、追加で剥離処理をおこなうのが通常です。完全にアルマイトが剥離できていないと、アルマイト後に一部分だけ黒い皮膜が残っていたり、白い皮膜が残ってしまったりする場合があります。
ですが、今回の製品は剥離して青色アルマイトした際に内径の寸法も考えられているため、追加で余分にアルミ素地を溶解させてしまうと、寸法が変わってしまいますので、そのままアルマイトすることになります。
剥離が正常にできなかった製品の外観は、後の記事でご紹介したいと思います。
2.青色アルマイト加工
今回の製品には、色見本が添付されており以前に弊社でおこなった青色アルマイトの色調のサンプルです。この色見本の色調に合わせて欲しいということでサンプルが添付されています。
他社でアルマイトした製品の色見本では、染料の種類などもあり色見本があっても同じ色調にはならないことが多いです。
この色見本に合わせてアルマイトの色調を合わせていきます。
剥離した際に寸法減少もあるため、アルマイト皮膜を10〜15μm生成させるとともに、皮膜の厚さをある程度確保して、内径をできる限り元の状態に近づけていきます。
この時に、皮膜の厚さを厚くしすぎると、皮膜の光沢感も損なわれますので、10μm程度にしています。
アルマイト皮膜が生成後、青色の染料の中に浸漬して着色し、水で染料をきれいに洗い流します。
ここでしっかりと染料を洗い流しておかないと、染料が封孔処理液の中に入ってしまい、封孔処理液の寿命を短くしてしまうため、水洗が重要になります。
封孔処理が完了したら、乾燥し製品を治具から取り外し完成となります。
完成した青色アルマイトの製品が下記の写真です。
(製品が何種類かあったため、最初の写真と製品が違います)
3.剥離が正常にできなかった製品
黒色アルマイトの剥離のところで、正常にアルマイトが剥離できなかった製品も、そのまま青色アルマイトが施されています。
黒色のアルマイトが部分的に残っています。
正常にアルマイト剥離ができなかった原因は不明ではありますが、何かここに付着していたか?
他の正常な部分と何か違いがあったため、この部分だけアルマイトが剥離できていません。
最初に書いたように内径の寸法公差がありますので、剥離作業を追加できずこの状態になっています。
お客様にも状況を確認していただき、今回はこの状態でもOKということで許可をいただき納品となりました。
寸法公差がない場合は、再度剥離処理を追加して綺麗な表面にすることで、このような発生はなくなります。
そのほかには、バフ研磨で除去・サンドブラストで除去・切削で除去などをおこなう場合もあります。
4.動画で解説しています。
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