スパッタリング
低圧気体放電の際、原子、イオン、分子などの高エネルギー粒子が電極に衝突して電極構成原子をたたき出す現象をスパッタリングと呼び、一般に基板に衝突させる粒子は正イオンが利用されます。
スパッタリング現象は、物理スパッタリングと化学スパッタリングに分けられ、物理スパッタリングは、イオンの衝突により、固体表面原子が飛散、放出するもので、イオンエッチングなど研磨技術への応用が考えられています。
化学スパッタリングは、活性ガスのイオンが固体表面原子と反応して化合物をつくり、さらに後続イオンの衝撃を受けて物理スパッタするもので、イオン窒化などの表面硬化への応用などがあげられます。
スパッタ現象は1852年に発見されたと言われ、1955年にこの現象について系統的な研究報告がされ注目を集め、薄膜作成への応用を目的とした研究が行われました。1965年には、従来の直流電圧を利用する直流放電型に変わる高周波電圧を陰極に印加する高周波放電型のスパッタリング法が考案され、それまで金属膜の作成に限られていたこの技術を、誘電体・絶縁体薄膜の作成に利用できることが示され応用分野が一挙に拡大していった。従来の真空蒸着技術に加え、このプラズマ法によるスパッタリング技術が導入されたことにより、それぞれの特徴を生かした薄膜生成工程が組み立てられ、今日に至る。
またこのスパッタリング現象を固体の研磨やエッチングに利用する方法が開発され、スパッタリングによるエッチングの実用化が盛んになってきている。
方法としては、アルゴンイオンを約100eV以上の加速エネルギーで照射すると、試料表面原子がスパッタして表面が削りとられる。この原理を応用して下記の表に示すスパッタエッチング、イオンビームエッチング、イオンビームミーリングなどのイオン加工技術が生まれた。
下記の図は、直流二極型スパッタ装置の図で、10-2乗torrのアルゴンを流入しながら陰極に-2~5KVの負電圧を印加すると、真空槽内にグロー放電が起こり、プラズマ中の正イオンは陰極前面の暗黒部の強い電界で加速され、陰極に衝突してスパッタリングを起こす。
陰極から、たたき出された原子はプラズマを通り抜けてよう局面に到達し、その上におかれた基板上に薄膜を形成する。
スパッタリングによる薄膜形成の過程を大別すると次の3段階になる。
1) 陰極面におけるスパッタリング
2) 陰極から放出した原子の放電空間中の飛行
3) 基板面への原子の入射と膜形成
下記図は、イオンエッチングの原理を示し、これに用いられる数KeV~数10eV範囲の運動エネルギーでは入射イオンと試料原子の衝突は完全弾性衝突と考えられる。
イオンエッチングの特徴
1) 乾式法であること
2) 金属、非金属を問わずいかなる固体にも応用できる。
3) エッチングパターンの制御が容易で、立体的形状の形成が可能。
4) エッチング速度が10~10の3乗Å/minとかなり広い範囲で任意に設定できる。
5) 雰囲気からの汚染が少ない。
一方、装置が大掛かりであるにもかかわらず、エッチング速度がおそく面積の大きいエッチングには不向きとういう欠点がある。
下記の表はアルミニウム関係のスパッタリングの応用例を示します。
製品分野 | 部品材質 | スパッタ物質 | 対象部品例 |
---|---|---|---|
自動車 | プラスチック成型品 | Al,Cr合金 | インストメントパネル、コンソールボックス、ホーンセンターマーク |
ガラス | Al,Cr合金 | シールドビーム。フェンダーミラー、ルームミラー | |
金属、その他 | Al,Cr合金 | シールドビーム、アブソーバー、レバー、シャフト、ホイールキャップ | |
家電 | プラスチック成型品 | Al,Cu,Cr | フレーム、モール、プリント基板、スピーカー振動子 |
SI ウェハー、金属 | Al,Mo | リードフレーム、抵抗 Tr、IC、LSI、配線材 | |
精密機械 | ガラス | Al2O3,MgF2,ZnO2,CrO2 | 眼鏡レンズ、カメラレンズ、計器カバー |
ガラス | Cr,Al,Ag,Ti | リズムミラー、PPC用ミラー、照明、反射板 | |
繊維 | 紙、フィルム | Cr,Al,Au,Ag | スタンピングホイル、屏風、金銀糸 |
雑貨 | ガラス、プラスチック | Cr,Ti,Al | 化粧品容器、玩具、仏具、装身具 |
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