めっきやアルマイト、部品洗浄などアルミニウムの洗浄を行う際に、下記に示す4つの因子を総合的に関連づけ、脱脂洗浄を行うことが必要です。
1.化学的因子
洗浄を考えるとき、下記の表Aに記載の洗浄への影響因子を参照して被洗浄物と汚れの内容を把握する必要があります。
表A
項目 | 影響因子 | |
汚れ | 油 | 動植物油、鉱物油、粘度、添加剤の種類など |
その他 | 固形物汚れ、(研磨カス、錆、スマット、スケール、埃、異物など) | |
材質 | アルミ、鉄鋼、表面処理材、合金の種類など | |
形状 | 単純平板、パイプ、合わせ板、ネジなど | |
加工方法 | プレス、切削、絞り、曲げ、押出、引抜、研磨、ヘアーライン、ショット、溶接など | |
保存方法 | 加工後の保存環境と条件(室内・屋外・時間・温度・湿度など) |
表Bの「被洗浄物の汚れに対する洗浄効果」を考慮し、表Cの適切な洗浄剤を選定するようにします。
表B 被洗浄物の汚れに対する洗浄効果
汚れの種類 | 溶解 | 乳化 | 鹸化 | 剥離 | 分散 | ローリングアップ | 界面活性(湿潤・浸透) | キレート力 | |
油分 | 鉱物油 | A | A | B | C | A | A | A | C |
動植物油 | A | A | A | C | A | A | A | C | |
金属酸化物 | A | D | D | C | D | D | C | A | |
研磨カスなど | B | D | C | C | C | D | B | A |
A:かなり効果あり B:効果あり C:少し効果あり D:効果なし
表C アルミニウム用洗浄剤の種類と特徴
洗浄剤の種類 | 長所 | 短所 |
酸性洗浄剤 | 酸化物の除去に優れる 擦り傷除去に効果的 比較的液寿命がなはい アルミ素材への侵食が小さい |
多くの金属を侵食する 多量の油の洗浄力が弱い 脱脂力が比較的弱い |
中性洗浄剤 | アルミ素材への侵食がない | 洗浄力が弱い 酸化物が除去できない |
弱アルカリ性洗浄剤 | アルミ素材への侵食が小さい バブカス等の洗浄に優れる |
酸化物除去力が弱い |
アルカリ性洗浄剤 | 油への洗浄力が強い エッチング効果がある |
固形物汚れの除去力が弱い エッチングムラが生じる |
また最適な洗浄効果を得るには、洗浄剤の濃度・温度・洗浄方法をも含めて考慮すべきなのです。
2.温度の因子
アルミニウム洗浄にとって液温は効果として大きく影響します。一般的に液温を上昇させると洗浄力は向上し、次のような利点があります。
⑴汚れと素材表面との結合力を減少させる
⑵洗浄液の粘度を低下させ乱流作用を増加させる。
⑶汚れを緩めたり粘度を下げて洗浄効果を高める。
⑷洗浄液への汚れの溶解度を上げる。
⑸化学反応速度をアップさせる。
ですが、温度を上げすぎるとエネルギーロスだけでなく洗浄液が分解して壊れてしまったり、被洗浄物を駅から引き上げた際に、被洗浄物の表面が乾燥してシミになったりすることもあるので注意が必要です。
通常は、洗浄液に推奨する適正温度範囲が定められているので、その範囲内で使用することをお勧めします。
3.時間の因子
アルミニウムを洗浄するには、汚れの状態によって、ある程度の時間が必要となります。特に粘度の高いプレス油や、研磨汚れなどに見られるような有機物と無機物の複合した汚れでは洗浄時間の影響が謙虚に現れます。
被洗浄物の洗浄ステップは次のように進むと考えられます。
⑴汚れの表面から洗浄成分が浸透拡散する。
⑵汚れと洗浄成分が反応する
⑶反応した汚れが洗浄液中へ分離拡散する。
4.機械的因子
アルミニウムの洗浄において機械的方法とその作用を表Dに記載します。
機械力は洗浄に大きな効果があるため積極的に適応すべきです。これらの方法をいくつか組み合わせることで相乗効果も期待できます。
表D 洗浄における機械的効果
機械装置 | 機械的効果 |
揺動(上下・回転)、液流動、超振動、液撹拌、噴流 | 洗浄液の流速効果 汚れの拡散 |
エアー撹拌 | 洗浄液の流速効果 汚れの拡散 汚れの吹き飛ばし効果 |
スプレー | 汚れの吹き飛ばし効果 剥離 |
超音波 | キャビテーション効果 |
電解(陽極、陰極、PR、パルスなど)、バイポーラ | 発生ガスによる吹き飛ばし効果 洗浄液の流速効果 素地の溶解による汚れの剥離 |
ブラッシング | 擦り取り 拭き取り かき取り |
5.洗浄の最適な条件の決定方法
洗浄の最適な使用条件として、最も重要なのは、洗浄の4つの因子のバランスのとれた洗浄を行うことです、
汚れの状態から適切な洗浄剤を選定し、その洗浄剤の特性から濃度、温度、時間を決定し、最後に洗浄を保管する機械力を検討します。
また、化学的因子を軽減(低温、低濃度、有害物質の軽減)するには、先に機械力を用いた洗浄を想定し洗浄剤を選択する方法もあります。
例としては超音波を使用した洗浄方法では、キャビテーションによる洗浄効果が大きいのが特徴で、このキャビテーション効果で洗浄力が増加します。
ただし、キャビテーション効果は、洗浄剤成分が多くなるとキャビテーション効果は弱められてしまうため、洗浄剤濃度を低めに設定します。
キャビテーション効果とは・・・液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象
このように洗浄と簡単に言っても様々な方法がありますので、十分に被洗浄物の状態を確認し、選択することで、効果的な洗浄方法が得られるのです。
6.動画で解説しています。
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