先⽇、お客様より
『アルミ部品についた旋盤のツールマークをアルマイト⼯程で消す⽅法を検討して欲しい!』とご相談のお電話をいただきました。

ツールマークを消すには、通常の⼯程では難しいので他の化学処理⼯程や機械的処理⼯程を追加して、消す⽅法を検討することにしました。

現在、製品についているツールマークは下記の写真のような仕上がりです。
旋盤で加⼯された後に、サンドブラストで外観を整えているのですが、サンドブラストで全て消えているわけではなく、全体の中の2割ぐらいがツールマークが残ってしまうようです。

現在の通常量産しているアルマイト⼯程を完了した製品の仕上がり具合は、下記の写真の仕上がり状態です。

数量的には⽇に1万個ほどアルマイト加⼯をしなければならないため、⼀つづつ加⼯していては間に合いません。
ある程度の数量を⼀度に処理できる⽅法で検討しツールマークが、どこまで消えるのかを今回は試作してみました。

1.エッチング時間を3分おこなって、どうなるかを確認

現⾏おこなっているアルマイト⼯程の、エッチング⼯程の時間を延⻑してみます。
通常の1.5倍の時間に延⻑し、ツールマークが消えるかを確認します。
製品の⼨法変化量は3/100程度です。

3分のエッチングでは、やはりツールマークは消えません。
エッチング⼯程で、ツールマークの凹凸も同じように溶解されているため、ツールマークの凸部だけが溶けるというわけにはいかないです。

2.⼀度アルマイトした製品を剥離して再アルマイト

すでに⼀度アルマイトした製品のアルマイト⽪膜を剥離して再アルマイトしたら、どうなるのか?をテストしてみました。
アルマイト⽪膜を剥離することで、通常のエッチング⼯程よりも過度に溶解させることが可能ですし、⽪膜が剥がれる時の勢いで、多少違いがあるかもしれません。

これも実際にテストしてみないと、どのような仕上がりになるのかは判断できないので剥離してアルマイトしてみます。

3分のエッチングよりは、少し判りにくくなっているかと思いますが、丸くツールマークが判断できてしまうため、OKと⾔えるレベルではありません。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.エッチング時間を5分おこなって、どうなるかを確認

アルマイトを剥離するレベルで、エッチングをするとツールマークが⾒えにくくはなる⽅向に向かったので、今度は、エッチング時間を5分まで伸ばしてみました。
通常の3倍以上の溶解量になります。⼨法にして、5/100程度は製品が溶解します。

2で再アルマイトした状態よりも、ツールマークが⽬⽴たないような気がします。
素材のツールマークの違いもあるかもしれませんが、5/100近く溶解させると違ってくるようです。

ただし、ここまで溶解させてしまうと製品としての⼨法が問題ないレベルなのかが⼼配ではあります。

4.化学梨地処理をおこなって、どうなるかを確認

ここまでおこなったテストの結果、エッチング⼯程だけでは限界がありツールマークが⾒えなくなるような仕上がりにはなりませんでした。

そこで、化学梨地処理をおこなうとツールマークが⾒えなくなるかのテストをしてみることにしました。
化学梨地の⼯程では、化学梨地をおこなう前にエッチング⼯程を1分間実施し、その後に、1分間の化学梨地処理をおこなうことになります。
化学梨地仕上げ後のアルマイト完成品が下記の写真になります。

写真では、ほとんどわからないレベルまでツールマークが消えているかと思います。
⾁眼で⾒ると、薄らと下段の右から⼆つ⽬の製品にツールマークが⾒えます。

化学梨地処理の時間を延⻑することで、ツールマークは消える可能性がありそうですが、化学梨地の液のデメリットとして、アルマイトに使⽤する治具の磨耗が激しくなりランニングコストが上がってしまいます。

アルマイトの治具は、耐薬品性の⾼いチタン製の治具なのですが化学梨地の液には、溶解してしまうのです。そのため、治具を定期的に修理または、新規作成することになると、ランニングコストが上がってしまうことになるのです。

5.サンドブラストをおこなって、どうなるかを確認

化学梨地をしたことにより、凹凸を化学的に製品につけたのですが、今度はサンドブラストを使⽤して、製品の化粧⾯に凹凸をつけていきます。
お客様側でも、サンドブラストにて最初に処理をされているのですが、ブラストがしっかり当たっているところ、当たっていないところと分かれてしまっているようなので、故意に化粧⾯だけをサンドブラストして、アルマイトをしてみました。

下記の写真が、サンドブラスト後アルマイト加⼯です。

ツールマークは完全に消えており、化粧⾯は全て梨地外観になっています。
この外観で問題なければ、こちらの処理が⼀番有効ではありますが量産性を考えると厳しいかと思います。量産するのであれば、治具にラッキングした状態でサンドブラストを投射できる設備を⽤意するか、または、エプロン式と呼ばれるサンドブラスト装置で、まとめてサンドブラストするかの⽅法をとらなければならないので、設備投資が必要になってきてしまいます。

ここまで条件出しテストをおこなったので、⼀度製品サンプルをお客様に確認していただき、どのレベルでOKとするか、または、もう少し条件を詰める⼯程をどれにするかを選択していただくことにしました。

また、新たな条件だしテストなどが始まれば、ご紹介したいとお思います。

6.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類