イオン工学的コーティング(PVD)

前回は、気相めっき法(CVD)について書きましたが、今回は、イオンプレーティング・蒸着法・スパッタリングなどのイオン工学的コーティング、“Physical Vapor Deposition” 略して、PVDについて書いていきます。

イオンプレーティング

蒸着法

スパッタリング

PVDは、前回書いた、化学的プロセスのCVDとは本質的に異なり、CVDと対比して分類されるものです。下記の表「イオン工学的表面処理技術の分類」にPVDの分類をご紹介しまが、この方法はコーティングだけではなく金属や合金の堆積によって箔や板・管などに任意の形状の部品を生成する技術も含みます。

表「イオン工学的表面処理技術の分類」
技術 イオン運動エネルギー 作業を行う領域
プラズマ法 イオンビーム法
ドライコーティング 真空蒸着 0.1~1eV ーーー 抵抗加熱蒸着・レーアー加熱蒸着・電子ビーム加熱蒸着
スパッタリング 数eV~約100eV 直流スパッタリング(直流印加,交流印加)
・直流2極スパッタ装置
・3極スパッタ装置
・4極スパッタ装置
イオンビームスパッタリング
イオンビームコータ
高周波スパッタリング ーーー
イオン化プレーティング 10eV~約5KeV プラズマコーティング イオンビームデポジションシステム
イオンプレーティング
・直流印加法
・高周波励起によるイオンプレーティング
クラスタイオンビーム蒸着
液状帯電粒子ビーム蒸着
イオン加工 数100eV~約数10 eV スパッタエッチング(逆スパッタ法) イオンビームエッチング
イオンビームミーリング
プラズマアッシャ
・プラズマドライエッチング
・プラズマドライストリッピング
ーーー
表面硬化(イオン窒化など) ーーー
イオン打込み 数 Kev以上 イオン打込み ーーー

表面処理に関する専門用語はこちらで詳しく解説しています

PVDは蒸発したい金属または化合物を直接気化し、ガス圧10-3乗~10-1乗torrの不活性ガスまたは反応性ガス雰囲気中で操作する方法と、ガス圧10-6乗~10-4乗torrの高真空領域で蒸着あるいは堆積を行う方法とに分けられます。
どちらも真空蒸着技術がこれらの基本となっており、蒸着技術は薄膜の作成が十分に制御できるように高度に発達し、電子工学的な素子の作成、光学及び装飾用コーティングなどに応答されています。

上記の表「イオン工学的表面処理技術の分類」に記載の、プラズマ法は構造が簡単で蒸着速度が早いのですが、放電状態の影響をうけやすく、イオンビーム法は装置の操作は複雑ですが、放電維持用ガスや放電状態の影響が少なく、高品質の処理が可能。

PVD法の一般的に共通する特徴
①高純度の蒸着膜が得られる。
②膜を構成する結晶粒は約1μmと非常に細かく靭性、強度のある皮膜が得られる。
③基地への付着力の強い皮膜が得られる。
④皮膜面は基地表面と同等あるいは、それ以上の仕上がりとなる。
⑤金属、合金及びセラミックを高速度で堆積させることにより、高密度の箔、板および管などの部品を作れる。

下記の、表「イオン工学的表面処理技術の蒸着速度」はPVDの平均値的な蒸着速度になります。

表「イオン工学的表面処理技術の蒸着速度」
技術 プラズマ法 イオンビーム法
真空蒸着 ーーー 数100Å~数μm/min
(2500Å~75μm/min)
スパッタリング 100~200Å/min
(特殊な場合 1μm/min)
数10~数100Å/min
イオン化プレーティング 数1000~3μm/min 数10~3000Å/min
(クラスタイオンビーム蒸着では、数100Å~数μm/min)

Å=オングストローム

一般的に蒸着速度が1,0000Å/min 以上の場合は厚膜コーティング、任意の形をした金属または合金の体積、量産用の連続蒸着などに適していて、1000Å/min以下では薄膜蒸着に適しています。

上記の表「イオン工学的表面処理技術の蒸着速度」からわかるように、一般的にスパッタリングは蒸着速度が遅く、真空蒸着やイオンプレーティングは早い。

高真空領域へイオンを引き出して利用するイオンビーム法よりもプラズマ中でイオンを利用するプラズマ法の方が早い。合金、または化合物あるいは絶縁物などの皮膜生成にはスパッタリングが優れていて、プラズマ法に比べてイオンビーム法は良質な皮膜を得ることができる。

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