前回の記事で 『メッキとアルマイトの寸法変化の違い』について記事を書きましたが、今回は、メッキやアルマイトを剥離した場合の寸法変化について書きたいと思います。

メッキの場合は、素材に析出する。アルマイトの場合は、素材に侵食する部分と生成する部分があるため、皮膜を剥離した場合に寸法が変化します。
そのため、公差穴やタップのある製品の場合、穴が大きくなってしまったり、外径が細くなってしまったりして使えなくなってしまう場合があります。

1.メッキの剥離

鉄の製品にほどこされているメッキを剥離する場合、メッキされている金属を溶かして剥離することが一般的です。
今回は、弊社でもおこなっている亜鉛メッキを剥離する場合を事例に説明していきます。
下の図は、鉄素地上にメッキ皮膜10μmが施されている状態です。
この10μmの皮膜を塩酸に浸漬して、亜鉛メッキの亜鉛を溶解させていきます。

上の図が前回の動画でもご紹介したように。鉄素材に亜鉛めっき10ミクロンが生成している状態です。
この皮膜を剥離していくのですがメッキされた製品を塩酸に浸漬すると、亜鉛が溶解されて赤色部分のメッキ皮膜がなくなり、素材の厚みに戻ることになります。
ただし、塩酸の中に長時間浸漬しておくと鉄素地も塩酸により溶解してしまいますので、表面がガサガサになってしまったり、厚みがうすくなってしまうことにもなりますので、長時間の放置は危険です。
メッキラインでは、インヒビターと言われる抑制剤を入れて化学反応の急激な進行や局部的な進行を防止する場合もあります。

2.アルマイト皮膜の剥離

アルミニウムに施されたアルマイト皮膜は、アルマイト電解時にアルミニウム素地に浸食するように生成しています。
メッキのように素地の上に生成しているわけではありません。
前回の記事でご紹介していますが、下図のようにアルマイト皮膜を生成した時点で、素材時点と同寸法になっています。
その皮膜を剥離することになりますので、板厚方向で20μmは素材が減少することになります。

アルマイト皮膜は、加温された苛性ソーダ溶液に浸漬すると、徐々に発泡してアルマイト皮膜が溶解されていきます。
この時、剥がれやすいところから順番にアルマイト皮膜が剥がれ始め全体へと広がっていきます。
最初に皮膜が剥がれた部分は、最初にアルミニウム素地が露出するのですが、アルミニウム素材も苛性ソーダにより溶解してしまうため、寸法の変化に対して注意が必要です。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.アルミニウム上の無電解ニッケルメッキの剥離

アルミニウム素材上に施された無電解ニッケルメッキ皮膜は、硝酸に浸漬することで剥離することが可能です。
アルミニウム上に施された無電解ニッケルメッキ皮膜の下には、置換メッキされた亜鉛の皮膜もあり、2層構造になっていますが、この置換メッキ皮膜も硝酸で除去が可能です。

アルミニウムに無電解ニッケルメッキを施す際に、アルミニウムをエッチング処理されているため、もともとの素材寸法よりもアルミニウム自体が寸法減少しています。
その素材の上に無電解ニッケルメッキ皮膜を生成し、上の画像のように寸法が変化しています。
この無電解ニッケルメッキ皮膜と置換メッキ皮膜を剥離するため、厚みにして10μm素材が減少することになります。
アルミニウムは、両性金属のため酸性にもアルカリ性にも溶解します。
硝酸に浸漬した場合でも、長時間浸漬したままにしてしまうとアルミニウム素材も寸法変化を起こしてしまいますので、長時間の放置は避けなければなりません。

4.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者