アルミニウムにはアルミニウム展伸材意外にも、アルミニウム鋳造品・アルミニウムダイキャストという素材があります。
先日、その中のアルミニウム鋳造品AC2Bをアルマイトした時に、アルマイトラインから取り出されてきた製品の無色アルマイトの仕上がり外観が違う状態のものがありました。

皮膜厚さは5ミクロンのアルマイトのため、通常の色調は銀白色のアルミ調の色なのですが、濃いグレーのような仕上がりだったため、何か違いがあるのでは!?と一度処理を止めて確認をおこなったので、その際のことをご紹介していきたいと思います。

アルミ鋳造品というのは、意外と複雑な形状のものの場合に使われている時が多く、展伸材のアルミの塊から切削で削り込んでいくよりも、ある程度の形状まで鋳造で作成しておいて、寸法などが厳しい部分を切削で加工する方がコスト的にもメリットがあります。
ですが、アルマイト加工の際に、展伸材のようには綺麗に仕上がらないデメリットもあります。

1.アルマイト後の製品確認

まずは、アルマイトラインから出てきた先ほどの製品の現状を把握していきます。

・アルマイトラインから出てきた製品の色が違う。
・工程は他の製品と全く同じ工程を通っている。
・特別、他と違うところがないのですが、色だけが違う。

この状態で次のロットをアルマイト加工することはできないので、残りの分は、アルマイトするのは止めて、製品を確認していきました。

4個製品をアルマイト加工して、1個だけ色が違う。
出来上がった製品をよく見てみると、表面の状態が違うことに気付きました。

通常、お客様からお預かりして状態で、表面の状態が違うというようなことはないので、これが原因かも!?と思い、アルマイト前の素材も確認することにしました。

2.素材の確認

素材を確認しに現場に行くと、確かに、下の写真のように素材の表面が違う製品が何個かあります。

ちょっと、これぐらい離れている製品の写真ではわかりづらいので、この写真を拡大してみてみると、こんな感じです。

表面状態の違いがわかりますよね!?
写真左側は、アルミ鋳造された状態の表面で、写真右側は、アルミ鋳造後にショットブラストされたような表面になっています。

アルマイトの皮膜はほとんど無色透明ですが、アルミ鋳造品の場合、アルマイト電解をした際に、アルミを鋳造する時に含有される他の金属との兼ね合いでアルマイト皮膜が発色するのですが、今回のように表面の状態が違う場合も、アルマイトの仕上がりに出てきてしまいます。
以前に、表面状態の違いによる色調の違いをご紹介した記事がありますので、下記の記事もご参考にしてください。

青色アルマイトのサンドブラスト表面と切削表面の仕上がりの違い

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.外観の違う素材をアルマイトしてみる

アルミ素材を確認した際に、表面状態の違う製品を見つけたので、これを実際にアルマイトしてみて同じようになるかを確認します。

これで同じようにならなければ、原因は違うところにあることになります。

治具にラッキングした製品を、2個アルマイトラインに投入します。

通常通りの工程を通り、アルマイト電解されアルマイト電解のタンクから取り出された時、ここですでに色が違うことが、見た目だけでも判断できるレベルでした。

封孔処理されて、アルマイトラインから取り出し治具から外した製品を並べて比較してみると、下の写真のように表面状態に違いがあります。

やはり、アルミ素材の状態が違うために色調に違いが出てしまっているようです。
原因がわかったので、お客様にご連絡して表面状態が違うため、アルマイトをすると色調に違いがあることを伝えて、他の製品のアルマイト加工を進めて良いのかを確認します。
場合によっては、ここでストップがかかることもあるので、気付いた時点で、こういう確認をおこたらないようにしています。

今回は、そのまま処理を進めて良いという指示を頂いたのでアルマイト加工を進めさせていただきましたが、単品の製品などでは、なかなかこういう部分に気づきにくいので、前回のロットなどと混合して使うような場合には、表面の状態というのは、揃えておかないと、後で問題が発生してしまいますので、ご注意ください。

4.動画で解説しています。


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青色アルマイトのサンドブラスト表面と切削表面の仕上がりの違い

アルマイトとは!?『失敗しないためにアルマイトを頼む際に気をつける事』

この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者