電気亜鉛めっきは、高い防食性と外観の美しさを持つ表面処理ですが、白錆と呼ばれる亜鉛の酸化物が発生しやすく、外観を損なったり、防食性が低下したりする可能性があります。そこで、電気亜鉛めっきの上にクロメート処理を施すことで、これらの問題を解決することができます。

1.クロメート処理とは

クロメート処理は、六価クロム酸塩や三価クロム化合物などのクロム化合物溶液に電気亜鉛めっきを浸漬し、表面にクロメート皮膜を形成する化学処理です。クロメート皮膜は、以下の効果をもたらします。

  • 防錆性の向上: クロメート皮膜は、電気亜鉛めっきよりもはるかに高い防錆性を持ち、白錆の発生を抑制します。
  • 外観の美しさ: クロメート皮膜は、透明、黄色、黒色など様々な色があり、電気亜鉛めっきに光沢と美しい外観を与えます。
  • 塗装の密着性向上: クロメート皮膜は、塗装との密着性を向上させ、塗膜剥離を抑制します。
  • 電気伝導性の向上: クロメート皮膜は、電気亜鉛めっきの電気伝導性を向上させます。

2.六価クロメート処理と三価クロメート処理の比較

従来、クロメート処理には六価クロム酸塩などの六価クロム化合物溶液を使用していました。しかし、六価クロムは発がん性などの健康被害や環境汚染を引き起こすことが懸念されており、近年では使用が制限されています。

そこで、近年注目されているのが、三価クロム化合物溶液を使用した三価クロメート処理です。三価クロムは六価クロムに比べて安全性が高く、環境への負荷も少ないという利点があります。

注記:弊社では、三価クロムを使用した三価クロメート処理のみの取り扱いとなっています。

項目 六価クロメート処理 三価クロメート処理
使用するクロム化合物 六価クロム酸塩 三価クロム化合物
防錆性 高い やや低い
外観 白色、黄色、黒色など 白色、黒色など
塗装との密着性 高い やや低い
電気伝導性 高い やや低い
安全性 低い 高い
環境への負荷 大きい 小さい
コスト 安い 高い

六価クロメート外観

ユニクロ クロメート 黒色

三価クロメート外観

三価白色クロメート 三価黒色クロメート

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3.六価クロメート処理のメリット・デメリット

メリット

  • 高い防錆性
  • 様々な色の皮膜形成が可能
  • 高い塗装との密着性
  • 高い電気伝導性
  • 安価

デメリット

  • 人体や環境に有害な六価クロムを使用する
  • 処理工程が複雑
  • 廃棄処理が難しい

4.三価クロメート処理のメリット・デメリット

メリット

  • 六価クロムに比べて安全性が高い
  • 環境への負荷が少ない
  • 廃棄処理が容易

デメリット

  • 六価クロメート処理に比べて防錆性がやや低い
  • 皮膜の色が限られる
  • 塗装との密着性がやや低い
  • 電気伝導性がやや低い
  • 六価クロメート処理に比べてコストが高い

5.電気亜鉛めっきにクロメート処理を施す際の注意点

  • 六価クロメート処理と三価クロメート処理にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、用途や目的に合わせて適切な処理を選択する必要があります。
  • 六価クロメート処理は、人体や環境に有害なため、適切な防護措置を講じる必要があります。
  • 三価クロメート処理は、六価クロメート処理に比べて防錆性がやや低いため、使用環境によっては十分な防錆性が得られない場合があります。

電気亜鉛めっきにクロメート処理を施すことは、防食性、外観、塗装性、電気伝導性を向上させる効果がありますが、六価クロムの使用、処理工程の複雑化、コスト増加などのデメリットもあります。これらの点を考慮し、用途や目的に合った表面処理を選択することが重要です。

表面処理の問題解決します。加工可能な表面処理、お問い合わせ前にご確認ください。

この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類