先日、弊社のお問い合わせフォームより、黒色アルマイトとつや消し黒色アルマイト工程の違いについて、ご質問がありましたので、記事にさせていただきました。
仕上がった製品的な違いとしては、
通常の黒色アルマイトなのか?(写真左)
艶消しの黒色アルマイトなのか?(写真右)
の違いになるのですが、外観が違うということはアルマイトの工程に違いがあります。
では、アルマイト工程について説明し、その後に、黒色アルマイトとつや消し黒色アルマイトの違いについて説明していきたいと思います。
1.アルマイト工程
アルマイトの代表的な工程は、下記の図に示してありますが、この工程以外にも、スクリーン印刷・エッチング・化学研磨・染色などの反復による組み合わせ工程で処理するものもあります。
アルマイト前素材として入荷した製品が、機械的なブラストなどの加工をされるのか、機械的前処理はされず、無処理として加工されるのかに分かれます。
その後、脱脂処理をされるのですが、脱脂処理にも、アルカリ性・酸性・無浸食性の脱脂処理があり、業者毎に使用している脱脂剤が違ってきます。
次に行われる処理が化学エッチング、または化学的・電気化学的電解研磨のいずれかになります。
通常の皮膜であれば、化学エッチングが行われ、脱スマットへと進んでいきますが、光沢が必要となる処理の場合は、化学研磨や電解研磨が施され光沢を出し、脱スマットとへと進む事になります。
脱スマットでスマットが除去された製品が、陽極酸化処理に進み、アルマイト電解を行う事になります。
陽極酸化の液にも種類があり、クロム酸法・硫酸法・硬質法・その他がありますが、一般的におこなわれているアルマイトは硫酸法が一般的であり、硬質法については、硫酸法の液を0℃程度まで冷やして電解する方法がとられています。
陽極酸化でアルマイト皮膜が生成したのちに、カラーリングなどをする工程になります。一般的なカラーリングは染色処理で有機染料を用いた染色が一般的ではあります。
そのほかには、二次電解発色や印刷など、染色としては、オイルカラーでの染色・無機染料での染色などがあり、個々の方法には全て特徴があり、使用用途などで使い分けされます。
カラーリングの工程が終わると、封孔処理を施し、色抜けの防止と耐食性向上が行われますが、この封孔処理にも種類があり、加圧蒸気・酢酸ニッケル・そのほかの沸騰水封孔であったりフッ化ニッケル封孔などがとられます。
アルマイトと言っても、このように複雑な工程となり処理内容によって工程を使い分けて作業する事になります。
2.黒色アルマイト工程
1のアルマイト工程で説明した工程の中で、通常の黒色アルマイトは、どのような工程を通るのか?を弊社のアルマイトラインでの処理方法について書いていきます。
下の図が黒色アルマイトをおこなう際の工程になります。
脱脂処理・・・・製品に付着している油を除去します。
エッチング・・・自然酸化皮膜の除去と頑固な汚れの除去をおこないます。
脱スマット・・・エッチングで発生したスマットの除去をおこないます。
アルマイト・・・アルミニウム表面に酸化皮膜を生成させます。
染色・・・・・・アルマイト工程で生成した酸化皮膜を染料で染色します。
封孔・・・・・・酸化皮膜の孔をとじ、染料の抜け防止、耐食性を向上させます。
乾燥・・・・・・濡れている製品を乾燥させます。
各工程では、このように個別に意味があり、この工程を通過して初めて黒色アルマイトが完成します。
また、各工程の間には水洗と言って、水でアルミニウム表面に付着した薬液を洗い流し、次の工程へ薬液を持ち込まないように入念に洗浄がされており、この水洗も非常に重要な工程となります。
3.つや消し黒色アルマイト工程
つや消しのアルマイトをおこなう際には、通常の黒色アルマイトとは、工程が違う部分があります。
下図がつや消し黒色アルマイトの工程になりますが、一部黄色であらわした部分がありますが、その黄色の部分が黒色アルマイトとは工程の違う部分になります。
化学梨地・・・・アルミニウム表面を酸性のエッチング剤を用いて、化学的に梨地表面にします。
脱スマット・・・エッチング後の脱スマットと同様に、化学梨地で発生したスマットを除去します。
化学梨地で得られる梨地面は、サンドブラストで得られる表面ほど粗くはないのですが、サンドブラストでは処理のできないパイプの内面や、ブラストでは曲がってしまうような薄いアルミ板などにつや消し処理を与えるには効果的な処理になります。
製品の用途や形状などによっては、サンドブラスト加工をしたのちに化学梨地も加えてつや消し黒色アルマイトを施すような製品もあります。
黒色アルマイトとつや消し黒色アルマイト、その違いは、この化学梨地工程があるか?ないか?の違いだけになります。
ですが、この化学梨地の工程は、どこのアルマイト業者でもあるわけではなく、光学部品や医療機器部品などをアルマイトしている業者が比較的、導入している工程になりますので、ご依頼の際には、化学梨地工程をもっているか?の確認をされると良いかと思います。
4.動画で解説しています。
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