アルミニウムをアルカリエッチングすると、アルミニウム表面に黒い残渣(ざんさ)が付着して残ります。この残渣は、溶解したアルミニウムに含まれていた鉄や銅・マグネシウム・ケイ素などで、アルカリでは溶解せず、アルミニウム表面に残ってしまった、スマットと呼ばれるものになります。

エッチング後

アルミニウム展伸材の場合は、エッチング後にアルミニウム材料の表面を触ると、このスマットが簡単に除去できます。

1.アルミニウム材質によるスマットの違い

アルミニウムの材質により、スマットの発生具合に違いがあります。
アルマイト技術者は、このスマットの発生状況から、どのようなアルミニウム合金なのか見当をつけられます。

1000系などはスマットの発生はわずかで、5000系や6000系では、目視でなんとなくスマットの発生が確認できます。

2000系・7000系になると目視でも、はっきりとわかるほど、スマットが発生します。
下の写真が、7000系をアルカリエッチングした際のスマットの発生写真になります。

このように、スマットの発生状況が違うため、材質の違いの判別にスマットの発生状況を参考にすることができます。

お客様からお預かりした製品をアルマイト処理などする場合、製品の形状は同じでも、アルミニウムの材質が違うものが混じっている場合がありますが、アルカリエッチング後のスマットの発生状況で材質違いを発見することもあります。

また、同じアルミニウム材質でも、アルミメーカーの違いや生産ロットの違いなどにより、スマットの発生状況が違う場合があります。
これは、アルミニウム合金を製造する際の添加物の量にも幅があり、その幅の上限・下限、どちらに触れているかによってもスマットの量が違っているのです。

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2.スマットの除去

アルカリエッチングで発生したスマットを除去するには30%程度の硝酸を用いるのが一般的です。

硝酸は酸化性の酸のため、容易にスマットを除去することができ、この工程を脱スマットと呼びます。

アルマイト工程や、めっき工程をおこなう場合、脱スマット工程で使用している硝酸が次工程の槽へ持ち込まれてしまうのを防ぐため、十分な水洗を要します。
硝酸を使わず脱スマットを行う方法として、硫酸を使用する場合がありますが、希硫酸は酸化性に劣るため、スマットの除去は十分にはおこなえません。
そこで、加温するか、または過酸化水素のような酸化剤を常に添加することが必要になってきます。

銅や鉄・ケイ素などを多く含む、アルミニウム鋳造品やアルミニウムダイキャストの場合、アルカリエッチングをおこなうと多量のスマットが発生します。
このスマットは硝酸では十分に除去できないほど強く付着していますので、フッ酸や、硝酸とフッ酸の混酸を使います。
ですが、フッ酸を使用した場合、激しくアルミニウムを溶解させるため、アルミニウム表面が荒れてしまいます。

アルミニウム鋳造品やアルミニウムダイキャストで表面の荒れを起こしたくない場合は、アルカリエッチングをおこなわない方法の、非侵食性のアルカリ脱脂、溶剤脱脂などが使用されます。

3.硝酸によるスマット除去で発生する欠陥

スマット除去のために、脱スマットにアルミニウム押出材を浸漬すると、材料表面に黒い斑点(白やグレーの斑点に見える場合もある)が発生することがあります。
この原因は、押出機でアルミニウムを押出し後に、押出材を冷却するためのテーブルがあります。
このテーブルのカーボン棒上に置かれる際、押出材の熱で再加熱され、βーMg2Siの中間相が析出し、この析出した中間相が脱スマットの硝酸により、溶解され、角度によって、黒や白、グレーなどの色に見える斑点となります。

この斑点は、硫酸よりも硝酸の方が発生しやすい。
この現象は、素材による不具合であり、アルマイト工程などで対策することは難しく、押出工程側で 改善する必要があります。

4.スマット除去がうまくできなかった場合の影響

アルカリエッチングで発生した、スマットが正常に除去できず、次工程のアルマイト工程に持ち込まれた場合、どのような影響を与えるであろうか。

アルマイトの場合、アルミニウム表面に残留したスマットがあっても、アルマイト皮膜の生成に影響を及ぼすことは、ほとんどない。
アルマイトは、アルミニウムそのものが液中の酸素と反応し酸化するため、スマットが通電を阻害しない限りアルマイト皮膜は生成する。スマットの粒子は非常に細かい粒子であるため、通電を阻害することはないのです。
ですが、アルミニム表面に付着していたスマットは、アルマイト電解や液の撹拌などにより脱落し電解槽に沈殿しアルマイト液を汚す原因となります。

ケイ素が多いアルミニウム合金の場合、スマットは表面に付着しているだけでなく、スマット粒子がアルミニウムに突き刺さっている場合があります。
その場合、スマットが除去しきれていないと、アルマイト皮膜が粗面になったり、黒色アルマイト皮膜の場合は、灰色の外観になったりします。

また、めっきや塗装の場合には、スマットが残留してしまっていると、スマット上に皮膜が生成してしまった場合、のちにめっきや塗装が膨れてきて剥がれたりしてしまったり、めっきが生成しないなどの不具合をおこしてしまいます。

化成皮膜などでは、スマットが残っていると外観のムラや、化成皮膜が生成せず耐食性がないなどの不具合の原因となります。

これらの不具合を発生させないためにも、脱スマットでは、確実にスマットを除去する必要があります。

5.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類