以前に弊社のお問い合わせフォームよりお問い合わせがあったのですが
『アルマイト時にムラ・傷が発生してしまいました。
こういったものを、剥離・再メッキすることで修正することは可能なのでしょうか?』
メールの内容によると、A6061材に海外の仕入れ先にて製作をされたとのことです。
メールに添付されていた画像が下記になります。
確かに黒くなったムラや傷が気になります。
図面にもキズ無きことと記載されているので、これでは検査に通らないかと思います。
再加工したい内容ではあるのですが、キズやムラを消せるかどうかも、大切なのですが、それ以外にも確認しなければならないことがあります。
その内容は書かれていなかったのでメールにて返信し、回答をいただきました。
1.アルマイトを剥離することで起こりうる現象
ムラやキズを消す前に、確認しておかなければならないことがあります。
- 剥離することで現状のアルマイトを溶解させるため、現在のアルマイト皮膜分だけは、穴径などが拡大する。
- 剥離することで、現在の艶が消える可能性がある。
- 剥離した状態で、ムラが除去できていれば問題ないが、残っていた場合は機械的に磨く必要がある
- 素地まで届いているキズは、アルマイトを剥離した後に、バフ研磨または、切削加工をおこなわなければ取れない
これらの4項目を事前に確認させていただき、問題がなければ剥離して再アルマイトが可能になりますが、どれか1項目でもNGな内容があれば、再加工はできないです。
2.アルマイトは剥離すると穴径が拡大する
図面に書いてある公差範囲が写真からでは読み取れませんが、公差があるのはボヤけていても判断できます。
その状態で、アルマイトを剥離するのは非常に危険です。
アルマイトは苛性ソーダを水に溶かし、加温した液で溶解させます。
ですので、切削加工で削るように狙った寸法通りに確実に溶解させるというわけにはいきません。そのため、アルマイト皮膜の厚さよりも余分に溶解させて、確実にアルマイト皮膜を除去します。
自社でアルマイトを施したものであれば、アルマイトの皮膜厚さなどもわかりやすいので剥離する際にも、どれぐらい剥がれるか?ということを回答できますが、他社でアルマイトした場合は、膜厚計でアルマイト皮膜の厚さを測定してみないと、どれぐらい溶解するのかも見当がつきません。
そのため、剥離することでリスクが高まることは間違いないのでオススメはしません。
3.再加工するのであれば・・・
どうしても、再加工しなければならない場合、失敗するリスクも考えておかなければなりません。
ですが、そのリスクを最小限にするには、アルマイトを剥離後にキズなどを機械研磨で除去します。
その後に、3次元形状測定器などで、寸法の公差の厳しい部分を測定し、今の製品の寸法がどれぐらいなのかを把握します。
そして、測定結果からわかった寸法にどれぐらいのアルマイト皮膜を生成させることで、その製品の公差に収まるのかを判断し、アルマイトをおこないます。
手間はかかりますが、これが最良の方法ではあります。
これらの事項をユーザー様に確認していただいたところ、再加工はNGとなりましたが、再加工を先にしてからNGになるよりかは、手間もコストもかからなくて良かったかと思います。
と言っても、弊社の仕事には繋がりませんでしたが・・・・。
4.動画で解説しています。
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