以前にホームページのお問い合わせフォームからご相談があったのですが、アルミニウム合金 A7075で作成された金型が赤くサビて、サビなどの除去作業にかなりの工数を必要としているので、防錆処理などを検討しているとのお話でした。

実際に送っていただいた写真を見ると、赤いサビが発生していたのですが、アルミニウムのサビは白く腐食するのが通常です。そのため、この赤いサビはアルミニウムのサビではなく、他の構成部品で鉄を使っていて、その部品からのもらいサビなのではないでしょうか?とお返事をさせていただきました。

後日、再度お問い合わせがあり、

金型の構成部品の材質を調べてみたところ、SKS-3 SKD-11を使っており材料成分に、

C・・・炭素
Si・・・ケイ素
Mn・・・マンガン
P・・・リン
S・・・硫黄
Cr・・・クロム
Mg・・・マグネシウム
V・・・・バナジウム

が含まれてはいますが、鉄(Fe)は含まれていないと判断されます。

とご連絡がありました。


引用:理系の雑学・豆知識

『SKS-3』・『SKD-11』これらは鉄です。
お電話でお話ができたので、ミルシートにFeとありませんか?とお尋ねすると、
『Feは掲載されていなから、鉄ではない。』と話が進みません。

そこでミルシートを自分なりに調べてみることにしました。

1.アルミニウム 合金のミルシートを入手

アルミニウム合金のミルシートを入手し、書式はどのようになっているのか調べてみました。
材質は違いますが、書式は同じなので、今回は入手しやすい材質で見せていただき確認してみると、やはり、Alと掲載されREと規格値が記載されています。

REは、このアルミニウムを構成する化学成分100%のうち、Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Znの成分の割合%を全て足して、100%からマイナスした残りの分がAl(アルミニウム)であることを示しています。

これが通常だと、私自身も思っており先ほどの鉄の材質の場合、鉄が書いてないということが腑に落ちませんでした。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

2.鉄のミルシートを入手

鉄のミルシートは、以前にもみたことがあるのですが、ここまでしっかりと確認はしたことありませんでした。
知り合いの材料商社さんにお願いして、鉄のミルシートを見せてもらえないかお願いし、ミルシートを入手してみました。
これも、材質は違いますが、書式は同じです。

アルミニウムと違います。

アルミニウムのミルシートには、AlはREと表記されているのに鉄のミルシートには、表記がありません。
鉄以外の成分しか、明記されていないのです。

材料商社の方にお聞きしてみると、

『鉄のミルシートは通常、鉄の割合は書いてありません。
成分を合計して、残った部分が鉄というのは常識なので。』ということらしいです。

全く、知りませんでした。

お問い合わせのあったお客様に、ご連絡し、鉄のミルシートにはFeの割合が書いてないことをご説明し、鉄を錆びないように、めっきやコーティングすることでアルミニウムの金型が錆びるのを防止できるのではないでしょうか?というご提案をさせていただきました。

しかし、今回お話のあった、金型は半畳ほどある大きな金型のため、弊社で処理はできませんでしたが、非常に勉強になりました。

今回のお問い合わせで、ミルシートの違いについて学ぶことができましたので、
ブログ記事を書いてご紹介してみました。

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アルミニウムの錆、腐食の基礎知識

金属はなぜ錆びる?錆びやすい金属と錆びにくい金属

この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類