先日、弊社のTwitterに画像を投稿したところ、フォロワーさんからご質問がありました。

『アルミ製品を取り付けるのに使っている黒っぽい棒は何か?』ということでした。

質問内容

これは表面処理業界では治具(ジグ)と呼び、被表面処理物を支持及び被表面処理物に通電するために用いる支持具のことを言います。

他には、ひっかけ、ラックなどと呼ぶこともあります。

1.アルマイトで使われる治具とは

アルマイトで使われる治具は、アルミニウム製またはチタン製のジグになります。
今回、ご質問のあった治具は、チタン製の治具で液中に入る部分はオールチタン化されているため、見たことない方は「なんだろう?」と感じるかもしれません。

このほか、取り付け部はチタン製で胴体部分は銅で作成してあり、銅の部分をコーティングした治具、枠状にチタンやアルミニウム・銅で治具を作成し、保護する部分をコーティングしたものに、アルミニウムの針金で製品を取り付ける治具などもあります。

オールチタン製 オールチタン給電部は銅製で、液中に入る部分はオールチタン化された治具
部分コーティング 部分コーティング取り付け部はチタン製で胴体部分は銅で作成してあり、銅の部分をコーティングした治具
枠状 枠状枠状にチタンやアルミニウム・銅で治具を作成し、保護する部分をコーティングしたものに、アルミニウムの針金で製品を取り付ける治具

2.なぜ、チタン製治具を使うのか

弊社では、量産品、単品部品など様々な製品を生産しています。そこで、単品部品の場合には、治具を個別に作成すると費用がかかり過ぎてしまいますので、アルミ製の針金でラッキングします。
ですが、量産品ともなると、数量も何万個単位・何百万個単位になります。その際に、アルミ製治具では作業効率も悪く生産が上がらないとなるため、チタン製を使用しています。
下記の表に、チタン治具とアルミ治具の比較をしてみました。

チタン治具 アルミ治具 チタン治具の利点
耐食性 腐食は少ない 容易に腐食される 寿命が長く維持費が安く使用上の問題が少ない
電流損失 表面酸化皮膜が電流損失を防ぐ 治具から溶液への電流損失が大きい 電力費が少なくてすむ
引張強さ 35kg/mm2 約7.5kg/mm2 強度が高いので治具が頑丈で使用寿命が長い
耐力 23kg/mm2 3kg/mm2以上 接触圧力が高くかけれる
作業性 表面の酸化膜を脱膜する必要がない 使用都度、脱膜する手間がかかる 製品をラッキングしやすく、作業性に優れている
信頼性 治具の形状が変わりにくくバネ性が強い 接触部が摩耗しやすく、折れやすい 寿命が長い
価格 購入単価は高いが維持費が安価 チタンに比べて購入単価は安いが維持費が高い 維持費が安いため、量産品に向いている

上記のことからも、量産品を多く扱っている場合にはチタン治具の方が効率的であり、維持費も抑えることができる利点から、チタン製の治具を使用しています。

表面処理に関する専門用語はこちらで詳しく解説しています

3.破損した場合の修理利点

治具は、ある程度使用していると、折れたり、摩耗したりしてくるので、修理をすることがあります。その際にも、チタン製の治具は破損した部分を作成してもらい、溶接することで修理ができます。

溶接が取れてしまった治具
溶接外れ治具

溶接することで修理完了
修理治具

コーティングされている治具の場合は、修理する際にコーティングを剥離したあと、破損した部分を作成し、修理します。そして、再度コーティングをしなければならないため、修理費用がかさむことになります。

こうしたことから、アルマイトする際の治具には、チタン製やアルミ製の治具が使用されています。どのような治具を使用するかは、普段の仕事の内容によって使い分けがされていますので、アルマイト業者毎に、適切な治具を選択しているのです。

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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類