クロムめっきの使われ方
クロムは白色で融点が高い金属で、クロムめっきは硬さの違いで「装飾用クロムめっき」と「工業用クロムめっき(硬質クロム)」に大別されます。
工業用クロムめっきはハードクロムめっきとも言われ、硬いことで内燃機関のクランクシャフト軸受けやシリンダー内面の耐摩耗性に寄与します。
装飾用クロムめっきは、白色の光沢感があり、装飾用に使われます。身近なものでは、水道の蛇口や自転車の荷台などピカピカしためっきが付いているものが装飾用クロムめっきになります。
マイクロクラッククロムめっきとは、微細な割れが均一に分布されるように施すクロムめっきになります。(引用:JIS電気めっき用語)
ポーラスクロムめっきは、あらかじめ表面を粗してクロムめっきを施すか、めっき後、その表面をエッチングによって多孔性とし、油の保持性を与えたクロムめっきのことです。(引用:JIS電気めっき用語)
クロムめっきの構造
・装飾用クロムめっき
製品の美観のために仕上げめっきとしておこなわれるクロムめっきのことで、下地に光沢ニッケルめっきなどを数ミクロン付け、その上に薄く0.5ミクロン程のクロムめっきを施します。
めっき | 特徴 | 用途 | 液組成 | |
---|---|---|---|---|
装飾用 | 銅やニッケルを下地として、その上にクロムめっき | 腐食起きにくい | 装飾品 | 無水クロム酸、硫 酸 |
工業用 | 一定の厚さ、ビッカース硬さ750以上 | 皮膜が硬く安定、耐摩耗性に優れる | 自動車、産業機器、金型 |
・工業用クロムめっき
主として耐摩耗性を付与する目的で、比較的厚いクロムめっきを施します。一般的に下地めっきはしません。
クロムの硬い特性を生かし、数ミクロンのクロムめっきを施します。
工業用クロムめっきを施した事例(エアーシリンダーシャフト)
クロムめっきの特徴
・クロムめっきは硬い
めっき内に応力が発生しクラックが発生→めっき温度など、めっき条件を工夫してクラック発生を制御し、生じたクラックは油溜まりに付与しシリンダー内などの潤滑性に付与します。
・めっき脆性に注意
一定硬度以上硬い鉄鋼材料にめっきした時に水素ぜい性を起こします。(めっき中に水素ガスを吸着させ粒界が脆くなる現象)→めっき後速やかに200℃×2時間の加熱処理(ベーキング処理)を施します。加熱温度に注意が必要です。
クロムめっきの硬さと温度の関係
メッキは400℃を超えると急激にやわらかくなります。
めっき後の熱雰囲気には注意が必要です。熱雰囲気とは、めっき後に熱処理する場合の温度や使用環境温度のことです。
区分 | 用途 | めっき厚さの例 |
---|---|---|
ロール | 高分子化合物用 | 30 |
紡織用 | 20 | |
鉄鋼加工用 | 50 | |
非鉄金属加工用 | 30 | |
金型 | プラスチック成型用 | 10 |
ガラス成型用 | 50 | |
医薬品、食品用 | 10 | |
鍛造用 | 30 | |
窯業用 | 50 | |
シリンダー及びライナー | 油圧・空気圧機器用 | 20 |
水圧機器用 | 30 | |
ガソリンエンジン用 | 50 | |
ディーゼル及びガスエンジン用 | 100 | |
ピストン及びピストンロッド | 油圧・空気圧機器用 | 20 |
水圧機器用 | 30 | |
ポンプ用 | 20 | |
ディーゼル及びガスエンジン用 | 100 | |
ガソリンエンジン用 | 5 | |
ピストンリング | ディーゼルエンジン用 | 100 |
ガソリンエンジン用 | 50 | |
工具 | 切削用 | 3 |
計測用 | 3 | |
シャフト及びジャーナル | 一般機械用シャフト | 30 |
内燃機関用シャフト | 50 | |
その他機械部品 | 紡織用部品 | 20 |
エンジンバルブ | 5 | |
一般機械部品 | 20 | |
写真及び印刷用品 | フェロタイプ | 5 |
フィルム加工用 | 10 | |
印刷用ロール及び板 | 2 |
引用:JIS H8615:1999 工業用クロムめっき
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