アルミニウム材料を保管している間に、どの材質だったかわからなくなってしまったまま切削加工し、アルマイト加工依頼をされる時があります。そのまま、アルマイト加工工程に入れてしまうと、エッチング工程で、色や表面状態に違いが発生し仕上がりに違いが発生してしまいます。
アルマイト工程でも材質毎に発色具合などが違うため、仕上がり外観に違いが発生します。

アルミニウムに表面処理を行う上で、材料面の表面性状が問題になることが多いのですが、特にアルマイトにおいてはアルミニウム材質の影響が非常に大きく、その材料の選択に充分注意する必要があります。

アルミニウム材料の混入材料の取違いなどが最終段階の表面処理工程で大きなトラブルの要因となる場合が多々あります。

アルマイト不良が発生してしまった場合は、再アルマイト加工することになるのですが、製品の寸法精度が高度な場合は、不具合の発生した皮膜を剥離した際に、公差寸法から外れ再アルマイト後に寸法内に収まる確率は非常に厳しく困難になります。

1.アルミニウム材料の鑑別方法

アルマイト加工は、アルミニウム材質、組織、質別、加工履歴までの要因が外観に現れます。
表面処理の現場でおこなえる簡易なアルミニウム材料のチェック方法をご紹介します。

1-1.アルカリエッチングでのチェック

水酸化ナトリウム水溶液(5~10%、50℃)で1~3分間ほどエッチング後水洗してスマットの付着状況を確認する。
エッチングすることで、アルミニウム材質の差異、不純物、添加元素の析出状態が推察できます。
また、水酸化ナトリウムは常時在庫している表面処理工場が多いので早めに確認が取れます。

1-2.アルミニウム材料の結晶組織の検出

脱脂綿でエッチング液(濃硝酸10cc+濃塩酸30cc+フッ酸0.5~1cc)をつけ検出部を拭き、5~10秒ほどで水洗する。これを繰り返す。

こちらの方法でも判別できますが、上記3薬品を常時在庫していない表面処理工場もあるので準備に時間がかかる場合もあります。

1-3.導電率測定

導体の電気を導く性質、電気の通り易さを表します。
ダブルブリッジ法の回路(JIS-H-0505 非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法)で測定し判別します。
アルミニウム合金種、熱処理・加工度によって導電率が異なります。

1-4.アルミニウム材料の簡易鑑別

【手順】
(1) 試料検出面の油分を除去し、サンドペーパーで清浄な表面にする。
(2) 各試薬からガラス棒で1滴滴下し、約2分間放置後、反応面の色調を観察する。
(試薬が反応面から流れ出さないようにしなければならないため、平らな面などでしか確認とり難い)
下記に判別試薬の種類をご紹介しますが、こちらも現場で簡易に行うには難しいと思います。

試薬 反応
判別試薬A 10%水酸化ナトリウム80ccと30%過酸化水素20ccを使用前に混合したもの Al-Mg軽合金は赤色-茶黄色に呈色
判別試薬B 過塩素酸カリウム0.05gと水酸化ナトリウム3.5g、染料0.5~1gと水100ccを混合したもの Mgが存在すると紅色に呈色
判別試薬C 硫酸カドミウム5gと塩化ナトリウム5g・塩酸10cc・水90ccを混合したもの Znが存在すると黒変。

上記の判別試薬で、反応させた材料の反応の表を下記にご紹介します。

合金系統 判別試薬A 判別試薬B 判別試薬C
1000系 呈色なし 呈色なし 呈色なし
2000系 黒赤 呈色なし
3000系 茶黄 淡い赤 呈色なし
4000系 呈色なし 呈色なし 呈色なし
5000系 5083は淡茶色 濃い赤 5056は淡いネズミ色
6000系 呈色なし 6063は淡いネズミ色
7000系 黒赤 黒灰

表面処理に関する専門用語はこちらで詳しく解説しています

どの方法でも、確認は取れますが、日常、アルミニウムの表面処理を行っている工場の作業者や技術者であれば、「1-1.アルカリエッチングでのチェック」でご紹介した、こちらの方法で、おおよその材質の判別がつきますので、材質がわからなくなってしまった場合は、普段お取り引きしているアルミニウム表面処理工場へ頼んでみると良いかと思います。

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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類