AA10とは、アルミニウムの陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)10μmのことを表しています。
この記号は、アルミニウムの陽極酸化皮膜 JIS H8601にて決められている規格になりますが、JISで定められている陽極酸化皮膜の JIS規格は主に3つあり、下記にその種類をご紹介しておきます。
JIS H8601・・・アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化被膜に関する全般的な規格
JIS H8602・・・アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合被膜に関する規格
JIS H8603・・・アルミニウム及びアルミニウム合金の硬質陽極酸化被膜に関する規格
この他にも、試験方法や評価方法、測定方法を規定した規格があります。
これらの規格の中でJIS H8601にて、AA10は皮膜厚さを表してはいるものの、厚さだけが決められているわけではありません。AA10に対する、耐食性や耐摩耗性、封孔度も含めての規格となっていますので、下記にアルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜 JIS H8601(抜粋)をご紹介します。
1.皮膜厚さの等級
陽極酸化皮膜厚さは、平均皮膜厚さ(μm)によって表し、下記の表に適合しなければならないようになっています。皮膜厚さの等級は、製品の用途及び使用環境などを考慮して基本的には選択しますが、受渡当事者間で特別な協定がない限り下記の表による。
等級 | AA3 | AA5 | AA6 | AA10 | AA15 | AA20 | AA25 |
平均皮膜 厚さ(μm) |
3.0以上 | 5.0以上 | 6.0以上 | 10.0以上 | 15.0以上 | 20.0以上 | 25.0以上 |
※定められた平均皮膜厚さの80%に満たない測定点皮膜厚さがあってはならない。
下記の写真は、製品が小さく渦電流式膜厚計で膜厚測定ができないため、製品を切断し顕微鏡で断面を確認し皮膜の厚さを測定した結果。
渦電流式膜厚計
2.皮膜厚さの等級と主な用途例
陽極酸化皮膜厚さの等級は、製品の用途及び使用環境を考慮して選択する。
当事者間で特別な協定が無い限り下記表による。
用途によって特別な皮膜厚さが要求される場合は、『1.皮膜厚さの等級』にない平均皮膜厚さを決めてもよい。
皮膜厚さの等級 | 主な用途例 |
AA3 | 反射板、家電部品(内部)など |
AA5 AA6 AA10 |
台所用品、日用品、家電部品、装飾品、家具部材、車両内装、建築部材(屋内)など |
AA15 AA20 AA25 |
台所用品、車両外装、土木・建築部材(屋外)、船舶用品など |
用途上必要な場合は、受渡当事者間の協定によって、平均皮膜厚さの等級によらず、最低皮膜厚さを取り決めてもよい。
3.アルカリ耐食性
陽極酸化皮膜の耐食性は、各種の環境に耐える特性で、用途によっては、酸性、アルカリ性及び塩水雰囲気などの環境に耐える特性が要求されることもある。
等級 | アルカリ滴下試験又は起電力式耐アルカリ試験 | |
A種 | B種 | |
AA3 | ーーー | ーーー |
AA5 | ||
AA6 | 30以上 | 90以上 |
AA10 | 50以上 | 150以上 |
AA15 | 75以上 | 225以上 |
AA20 | 100以上 | 300以上 |
AA25 | 125以上 | 375以上 |
A種、B種の区分は特性の違いによる区分
※等級AA20以上の皮膜には、起動力式耐アルカリ試験をおこない、アルカリ滴下試験は適用しない。
4.キャス耐食性
等級 | キャス試験 | |
試験時間 h | レイティングナンバRN | |
AA3 | ーーー | ーーー |
AA5 | ||
AA6 | 8 | 9以上 |
AA10 | 16 | |
AA15 | 32 | |
AA20 | 56 | |
AA25 | 72 |
5.耐摩耗性
陽極酸化皮膜の耐摩耗性は摩耗環境に耐える特性で、用途によっては摩耗性物質の衝突による摩耗、摺動摩耗及び転がり摩擦などの磨耗環境に耐える特性が要求される場合もある。
噴射摩耗試験の耐摩耗性は、導通判定法によることとし、素地が露出するまでの摩耗時間で表す。
等級 | 砂落とし摩耗試験 S |
噴射摩耗試験 S |
往復運動平面摩耗試験 ds/μm |
AA3 | ーーー | ーーー | ーーー |
AA5 | 30以上 | ||
AA6 | 150以上 | ||
AA10 | 500以上 | 24以上 | |
AA15 | 750以上 | 36以上 | |
AA20 | 1000以上 | 48以上 | |
AA25 | 1250以上 | 60以上 |
往復運動平面摩耗試験は、1μmの皮膜を摩耗するのに要した往復運動の回数
下記の写真は砂落とし摩耗試験を実施した試験サンプル
6.封孔度
封孔度は、各種環境に適用した場合の耐食性、耐汚染性などを左右する重要な特性で、特別な用途として、封孔しない皮膜が要求される場合およびAA3を除き、下記の表のいずれかに適合しなければならない。
等級 | りん酸・クロム酸水溶液浸漬試験 g/d㎡ |
染料吸着試験汚染度 | アドミッタンス測定試験 μS |
AA3 | ーーー | ーーー | ーーー |
AA5 | 0.03以下 | 0~2 | 20以下 |
AA6 | |||
AA10 | |||
AA15 | |||
AA20 | |||
AA25 |
染料吸着試験は、有機染料皮膜および電解着色皮膜で暗色の皮膜はこの試験を適用しない。
簡易的に、簡単に封孔度を調べる方法は、以前の記事でもご紹介していますので、
下記のリンクよりご参考にしてください。
7.動画で解説しています。
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