1.異種金属接触腐食の概要

異種金属接触腐食とは、異なる金属が接触することで生じる腐食現象であり、特に電解質が存在する環境下で顕著に見られます。この現象は、金属間の電位差によって引き起こされ、電位差が大きいほど腐食が進行しやすくなります。例えば、アルミニウムとステンレス鋼が接触した場合、アルミニウムが腐食しやすくなります。これは、アルミニウムが電位的に卑金属であるためです。これにより、異種金属の接触部分に水分が存在すると、腐食が加速されることになります。特に、海水などの塩分を含む環境では、この腐食がさらに深刻化します。

異種金属間の電位差は、金属のイオン化傾向に基づいて決まります。イオン化傾向が大きい金属は、他の金属に比べて腐食しやすく、電位差が大きいほど腐食が進行しやすくなります。例えば、亜鉛と銅の組み合わせでは、亜鉛が陽極として腐食し、銅が陰極として保護されるため、亜鉛の腐食が加速されます。このように、金属の選択は腐食防止において非常に重要な要素となります。

異種金属接触腐食は、ガルバニック腐食とも呼ばれ、異なる金属が接触することで生じる電気化学的反応によって一方の金属がアノードとして腐食します。この現象は、金属間の電位差と電解質の存在によって促進されます。具体的には、卑金属が陽極として腐食し、貴金属が陰極として保護されるため、卑金属の腐食が加速されるのです。これにより、特に海水環境などの腐食性の高い条件下では、腐食が急速に進行することがあります。

腐食の進行条件として、水分や塩分などの電解質の存在が挙げられます。特に海水環境では、電気伝導率が高いため、異種金属接触腐食が激しくなります。水分が金属の接触部分に存在すると、電流が流れやすくなり、アノード側の金属が腐食しやすくなります。このため、腐食を防ぐためには、湿度や塩分濃度を管理することが重要です。また、カソード防食の原理を利用して、腐食を抑制する方法も有効です。

異種金属接触腐食の防止策として、最も効果的なのは異種金属の直接接触を避けることです。具体的には、絶縁材を使用して金属を分離する方法が推奨されます。例えば、メタルガードテープを接触部分に挿入することで、腐食を防ぐことができます。このテープは、金属よりもイオン化傾向が小さいため、犠牲的に腐食し、他の金属を保護します。これにより、異種金属間の腐食リスクを大幅に低減することが可能です。

2.アルミニウムの腐食メカニズム

アルミニウムの表面に形成される酸化アルミニウムの薄膜は、金属を腐食から守る重要な役割を果たします。この酸化皮膜は、乾燥した環境下で急速に成長し、外部からの攻撃に対してバリアを提供します。特に、酸化皮膜はアモルファス構造を持ち、機械的損傷を受けても再生する能力があります。したがって、アルミニウムの耐腐食性はこの酸化皮膜の存在に大きく依存しています。もしこの皮膜が破壊されると、アルミニウムは急速に腐食を受けることになります。これにより、アルミニウムの使用環境においては、酸化皮膜の保護が不可欠です。

異種金属接触による腐食は、アルミニウムが電位の低い金属であるため、特に顕著です。アルミニウムが銅やステンレス鋼などの貴金属と接触すると、電位差が生じ、アルミニウムが腐食の影響を受けやすくなります。この現象は、ガルバニック腐食と呼ばれ、特に湿潤環境下で顕著に現れます。したがって、異種金属を使用する際には、電位差を考慮した設計が重要です。

腐食の進行条件として、特に塩化物イオンの存在や酸性・アルカリ性環境が挙げられます。これらの条件下では、酸化皮膜が破壊され、アルミニウムが直接腐食にさらされることになります。特にアルカリ環境では、腐食が進行しやすく、注意が必要です。したがって、アルミニウムを使用する際には、環境条件を考慮し、適切な防護策を講じることが重要です。

アルミニウム合金においては、粒界腐食が特に問題となります。結晶粒の境界部分は、原子の並びが乱れ、不純物が蓄積しやすく、腐食に対して脆弱です。このため、粒界腐食が発生しやすく、合金の耐久性を低下させる要因となります。特に、強度を向上させるために添加された金属が、逆に腐食を促進することもあります。したがって、合金設計においては、粒界腐食を考慮した材料選定が求められます。

腐食防止策として、アルマイト処理や防食塗装、防蝕ライニングが有効です。これらの処理は、酸化皮膜を強化し、外部環境からの攻撃に対する耐性を向上させます。また、表面処理により電気伝導性が低下し、異種金属間の電池作用を抑制することができます。これにより、アルミニウムの腐食リスクを大幅に低減することが可能です。したがって、適切な防護策を講じることが、長期的な耐久性を確保するために重要です。

3.腐食の環境とリスク

異種金属接触腐食は、製品設計において重要な考慮事項です。特に、異なる金属が接触する場合、電位差が大きいと腐食が進行しやすくなります。例えば、亜鉛とステンレスの組み合わせでは、亜鉛が陽極として腐食しやすくなります。このため、設計段階での金属選定は、耐久性を確保するために不可欠です。適切な材料を選ぶことで、製品の寿命を延ばし、メンテナンスコストを削減することが可能です。

腐食が進行すると、金属の強度が著しく低下し、構造的な損傷を引き起こすリスクが高まります。特に、建築物や機械部品においては、腐食による劣化が致命的な影響を及ぼすことがあります。例えば、配管システムにおける異種金属接触腐食は、漏水や圧力低下を引き起こし、最終的には重大な事故につながる可能性があります。このため、設計段階でのリスク評価が重要です。

リスク管理は、異種金属接触腐食を防ぐための重要な要素です。設計段階での適切な材料選定に加え、腐食防止策の実施が不可欠です。例えば、絶縁材を使用して異なる金属を分離することや、腐食防止コーティングを施すことが効果的です。これにより、腐食の進行を抑制し、製品の耐久性を向上させることができます。

腐食の進行速度は、環境条件や金属の組み合わせによって大きく異なります。湿潤環境や塩分の多い環境では、腐食が急速に進行することが知られています。例えば、海水にさらされた金属は、内陸部に比べて腐食が著しく進行します。このため、使用環境を考慮した材料選定が重要です。

腐食の予防には、定期的なメンテナンスと適切な防止策の実施が不可欠です。例えば、金属表面の清掃や防錆剤の塗布、定期的な点検を行うことで、腐食の進行を抑えることができます。また、異種金属接触を避けるための設計変更や、絶縁材の使用も効果的です。これにより、長期的な耐久性を確保することが可能です。

4.腐食防止策の紹介

異種金属接触腐食を防ぐための効果的な手段の一つが、メタルガードテープの使用です。このテープは主成分として亜鉛を含み、金属とボルトの接触部分に挿入することで、腐食を防ぐ役割を果たします。亜鉛はイオン化傾向が小さいため、他の金属よりも先に腐食し、犠牲的な役割を果たします。これにより、接触部分の金属が直接腐食されるのを防ぎ、長期的な耐久性を確保します。特に、湿潤環境下での使用が推奨されます。

異種金属の接触を防ぐためには、絶縁材の使用が非常に重要です。絶縁材は、金属同士の直接的な接触を避けることで、電流の流れを遮断し、ガルバニック腐食のリスクを低減します。特に、電解質が存在する環境では、絶縁材が金属間の電位差を抑える役割を果たし、腐食の進行を防ぎます。これにより、長期的な耐久性が向上し、メンテナンスコストの削減にも寄与します。

防蝕コーティングは、金属表面に施すことで腐食を防ぐ効果的な方法です。塗装やメッキなどの手法が一般的に用いられ、これにより金属表面が外部環境から保護されます。特に、塗装は色の選択肢が豊富で、見た目の向上にも寄与します。また、メッキは膜厚を均一に保つことができるため、精密部品においても高い効果を発揮します。これらの方法を適切に選択することで、金属の耐久性を大幅に向上させることが可能です。

設計段階での金属選定は、異種金属接触腐食を防ぐために極めて重要です。異なる金属の組み合わせが電位差を生むため、設計時にこれを考慮することで、腐食のリスクを最小限に抑えることができます。特に、電位が近い金属を選ぶことで、ガルバニック腐食の発生を防ぎ、製品の耐久性を向上させることが可能です。設計者は、材料の特性を理解し、適切な組み合わせを選定することが求められます。

定期的な点検とメンテナンスは、異種金属接触腐食の進行を防ぐために不可欠です。腐食の兆候を早期に発見することで、適切な対策を講じることが可能になります。点検では、接触部分の状態を確認し、必要に応じて防蝕処理や絶縁材の再施工を行うことが推奨されます。これにより、長期的な耐久性を確保し、予期せぬ故障を未然に防ぐことができます。

5.設計時の考慮事項

金属選定は、異種金属接触腐食を防ぐための最初のステップです。設計段階で異なる金属の組み合わせを避け、電位差を最小限に抑えることが求められます。例えば、亜鉛とステンレスのように電位差が大きい金属同士は、接触することで腐食が進行しやすくなります。このため、製品設計時には、金属の電気化学的特性を考慮し、適切な金属を選定することが不可欠です。

異種金属が接触する場合、絶縁処理を施すことが腐食防止に効果的です。絶縁フランジや絶縁ボルトを使用することで、金属同士の直接的な接触を防ぎ、電位差による腐食を抑制します。特に、配管施工時には、異種金属の接合部に絶縁処理を施すことが重要であり、これによりガルバニック腐食のリスクを大幅に低減できます。

設計段階では、使用環境の条件を十分に考慮することが重要です。湿潤環境や塩分の多い環境では、腐食のリスクが高まります。これらの条件下では、金属の選定や防食処理が特に重要となり、適切な材料を選ぶことで、長期的な耐久性を確保することが可能です。環境条件に応じた設計を行うことで、腐食の影響を最小限に抑えることができます。

腐食を防ぐためには、定期的なメンテナンス計画を策定し、実施することが不可欠です。特に、異種金属接触腐食のリスクが高い環境では、定期的な点検とメンテナンスが重要です。これにより、腐食の初期段階を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能となります。メンテナンス計画には、清掃や防食処理の実施が含まれるべきです。


材料の耐食性評価は、異種金属接触腐食を防ぐための重要なステップです。使用する材料の特性を理解し、適切な防蝕処理を施すことで、腐食のリスクを大幅に低減できます。例えば、耐食性の高いコーティングやメッキ処理を施すことで、金属表面を保護し、腐食の進行を防ぐことが可能です。これにより、長期的な耐久性を確保することができます。

この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類