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めっき・表面処理用語集

析出(せきしゅつ)

析出とは、固体以外の状態にある物質が固体として現れる現象。主に、溶液から溶質である成分が固体として現れる現象を指すが、広義には蒸着または気相析出現象も析出の一種です。

めっきにおける析出とは

めっきにおける析出とは、電解液中の金属イオンが陰極表面に析出して金属膜を形成する現象のことを指します。これが、めっきの原理であり、様々な製品に金属膜を付着させる技術として広く利用されています。

析出メカニズム

  1. 電解液の構成: めっき液には、めっきしたい金属イオンの他に、電導性を担う塩類や、溶液のpHを調整する緩衝剤などが含まれています。
  2. 電流の供給: 電源装置から陰極(めっき対象物)と陽極(溶解性の高い金属板)に直流電流を供給します。
  3. イオンの移動: 電場がかかると、陰極にはマイナスイオン(主に水素イオン)、陽極にはプラスイオン(金属イオン)が移動します。
  4. 還元反応: 陰極表面では、水素イオンよりも標準酸化電位が低い金属イオンが優先的に還元され、金属原子となります。これが析出です。
  5. 酸化反応: 一方、陽極では金属が酸化されて金属イオンとなり、電解液中に供給されます。これが、電解液中の金属イオンを補給する役割を果たします。

析出に影響を与える因子

  • 電流密度: 電流密度が高いほど、析出速度は速くなりますが、膜厚が不均一になりやすく、粗い結晶構造になりやすくなります。
  • 電解液の温度: 温度が高いほど、析出速度は速くなりますが、金属イオンの種類によっては、析出される金属の種類が変化したり、溶液の分解が起こったりすることがあります。
  • 電解液のpH: pHが低いほど、水素イオンの発生量が多くなり、析出される金属の品質が低下することがあります。
  • 添加剤: 添加剤の種類や濃度によって、析出速度、結晶構造、膜の硬度、光沢などの析出特性を調整することができます。

析出の種類

析出には、大きく分けて2種類あります。

  • 一次析出: 基板に直接めっきを行う方法です。一般的に広く用いられています。
  • 二次析出: 一次析出で形成された膜の上に、別の金属膜を析出させる方法です。多層めっきや複合めっきなどに用いられます。

析出の重要性

析出は、めっきの品質を大きく左右する重要なプロセスです。析出条件を適切に制御することで、以下のような様々な特性を持つめっき膜を得ることができます。

  • 耐食性: 錆や腐食から基材を保護する
  • 耐摩耗性: 摩擦や摩耗による摩耗を防ぐ
  • 導電性: 電気を通す
  • 装飾性: 美しい光沢や色合いを与える
  • 機能性: 特定の機能(例:磁性、光触媒性)を持たせる

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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者
危険物取扱者乙種4類