ステンレスは、「錆びない」と思われていることが多いですが、「錆びにくい」金属になります。
今回、ステンレスの板に鉄製品を置いて水を付着させることで鉄に錆が発生し、その錆がステンレスに移ってしまう「もらい錆」という現象を起こさせてみましたのでご紹介します。
1.もらい錆発生の実験
もらい錆を発生させるために、ステンレス板(材質:SUS430)の上に鉄製品(めっき無し)を置き、水をかけて1日置いてみました。
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※クリックすると画像が拡大します。
1日経つと水が蒸発しなくなり、赤錆が鉄製品周辺に広がっており、ステンレス板の上にまで赤錆が付着しています。
この状況まで進むともらい錆というレベルになり、ステンレス板に錆が移り始めています。
2.もらい錆を除去してみる
鉄の製品を取り除いてみると、もらい錆がステンレス板に付着してしまっています。
中性洗剤で錆を洗い流してみると、赤錆は除去できていますが、黒く鉄製品の淵に合わせるかのように痕が残ってしまっています。
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※クリックすると画像が拡大します。
このように痕が残ってしまうと簡単には除去できず、
- 機械的に研磨する
- サンドブラストで除去する
などの方法を取るしかなくなってきます。
3.黒い部分を拡大してみる
赤錆を除去した部分を、マイクロスコープを使って拡大して観察してみました。
20倍に拡大 | 200倍に拡大 |
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※クリックすると画像が拡大します。
錆が完全にステンレス板に食い込んでしまっているようにも見えます。
なぜ、このように見えるのか?正常部・黒変色部・茶色変色部の成分を元素分析にて解析した結果を下記にてご紹介します。
正常部 |
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正常部の元素は、Fe(鉄)86.9% Cr(クロム)13.1%になっています。
SUS430素材のため、鉄が多く含まれている素材になります。
黒変色部 |
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黒変色部では、Fe(鉄)77.0% O(酸素)16.4% Cr(クロム)6.6%と鉄・クロムの成分が減少し酸素が検出されるようになりました。酸素が検出されたということは、表面が酸化されているということになり、錆びているということがわかります。
茶色変色部 |
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茶色変色部では、Fe(鉄)63.7% O(酸素)28.5% Cr(クロム)7.8%と酸素が黒変色部より増え、より強固に錆が発生していることがわかります。
この事例のようにステンレスに鉄を接触させ、水分のある環境下で放置していると錆がステンレスに移ってしまい、除去できないレベルの錆が発生してしまうことがわかります。
鉄製品に、めっきが施してあれば鉄が錆びるまでに時間がかかりますので、もらい錆をうけるまでの時間は伸びますが、鉄が錆び始めると同じ現象になりますので注意が必要です。
また水をかけなくても、空気中の水分などでも鉄が錆び始めると同じ現象が起こりますのでご注意ください。
ステンレスの耐食性をさらに伸ばしたい場合には、『パシペート処理』というステンレス表面に不動態皮膜を生成させる方法もあります。