先日、ホームページを見たということでお電話をいただき、
『他社にA7075のアルミ部品をアルマイト依頼したのですが仕上がりが酷くムラが生じています。なんとかできませんか?』とご相談のお電話をいただきました。

内容を簡単に聞いただけでは、状況がわからないのでホームページのお問い合わせフォームより、詳細とその部品の写真を送っていただくことをお願いしました。

添付されていた写真がこちらです。

部品表面

部品裏面

これは、正直酷いです。

これはムラというよりも、アルミニウムが腐食してしまっています。
材質はA7075なので、水分で腐食してしまう材質なのです。

お問い合わせくださった方は、光沢のある外観にしたかったため、鏡面に磨いてから業者に渡したそうなのですが、仕上がってきたら、こんな状態に。

しかも、腐食してしまったところは、誤魔化そうとしたのかペーパーで磨いた痕跡まである状態です。

この写真から腐食痕があるため、このままでは使いたく無いのもわかります。
しかし、これを鏡面にして綺麗にアルマイトを施す事ができる可能性は、再度切削して腐食痕を除去するしかありません。
お問い合わせくださったメールに、『可能ならツヤ有りで仕上げたいがヘアーラインでも、梨地でも良いからきれいに仕上げたい』事が書いてくださっていたので、弊社でできる最大限の努力をしてみることにしました。

1.現品を確認し、最適な処理を検討する

写真を確認した段階で、『どこまで綺麗に再加工できるのかわかりませんが、最大限の努力はしてみます。』とお伝えして製品を送っていただいたのですが、実物をみるとやはり、腐食痕がしっかりとあります。

正直、今まで腐食痕が出てしまった製品を、弊社でも修正した経験はありません。
ですが、なんとかならないか?と検討する中で、

サンドブラストで研削して、腐食痕を除去し部分的に荒れてしまった表面と良好部の表面粗さを揃えるために、全面をサンドブラストして、粗さを整えたらどうか!?と考えました。
そして化学研磨後、アルマイト加工することで修正できるのでは?と・・・

2.アルマイトを剥離する

まずは、現在の腐食痕の出てしまっているアルマイト皮膜を剥離します。
ステンレス製のフックに吊るして、苛性ソーダ溶液に浸漬し、剥離をしていきます。

A7075なので、スマットも出てきますので硝酸に浸漬し、スマットも除去します。
アルマイト皮膜の剥がれるスピードからすると、アルマイトの皮膜は5μm程度ついている感じです。

アルマイトを剥離した製品が下記の写真になります。

アルマイト剥離後1

アルマイト剥離後2

やはり、素地に腐食痕が出てしまっています。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.サンドブラスト加工で腐食痕を研削する

サンドブラストで腐食痕を研削し、腐食痕を除去します。
そんなに深いところまで腐食痕が入ってなさそうなので、被害は少なそうです。

このご依頼の時期、ちょうど6月なのですが、豊橋も梅雨に入っており、サンドブラストした製品は、油分もなく腐食しやすい状況なのでブラストが完了したら即、化学研磨しアルマイト工程へと進めていかなければ、腐食痕が再度発生してしまう可能性があります。

他の製品をサンドブラストしている間、乾燥機の中で水分を除去できるように乾燥し続け、水分の付着を極力抑えます。

4.化学研磨で光沢を出す

サンドブラストが完了した製品を化学研磨し、光沢を出すのですが、
A7075等のジュラルミン系は、硝酸タイプの化学研磨剤を使用して、化学研磨します。

こちらのタイプの化学研磨剤のほうが、光沢が出やすくなるのですが、研磨力が強いため、寸法変化も大きくなりますので注意が必要です。

5.アルマイト加工を施す

化学研磨後、アルマイト加工に入ります。
この間も、時間をあけず連続して作業を進めていきます。

これらのアルマイト工程全てにおいて、水分と触れているため電解までの時間をスピーディに行わないと腐食痕が発生してしまうのです。

同じ現象を発生させないためにも十分に注意しながら作業を進めるとともに、電解する電流にも注意します。

電流を強くかけすぎると、焦げてしまったり、A7075に施すアルマイト皮膜が発色してしまうためです。
A7075は発色すると、少し金色っぽい色味が付きます。
今回の製品は、シルバー調に仕上げるため、色味がつかないように電流を低めにして時間をかけて電解していきます。

電解が完了したら、封孔処理をおこない耐食性を向上させ乾燥します。

6.仕上がりのチェック

アルマイトが完了し、治具から取り外した製品を一つずつチェックしていきます。
全体的には綺麗な仕上がりになっています。

ブラスト化研アルマイト

これなら、お客様も満足してくれるのでは!?と思ったのですが、
気になる製品が一つ・・・

見えにくい位置ではあるのですが、1カ所だけ腐食痕が出ているところがありました。

黒斑点発生部

拡大してみると、

黒斑点拡大

わずかに、黒点があります。

まずは、現状ここまで出来上がっていますとの報告をお客様にするため写真をメールでお送りします。その際に、この黒点の製品のみ、やり直しをさせていただきたいというお話をし、許可を
いただきました。

ここまで仕上げてきて、この黒点に妥協したくないのです。

7.不具合品を再加工

不具合品を今回の再加工と同じように、アルマイト剥離→サンドブラスト→化学研磨→アルマイト
と、いう工程で再度、再加工していきます。
今回も今までと同様に、スピーディに処理し作業を進めていきます。

8.再加工品を再チェック

仕上がった再加工品に腐食痕やキズがないか確認し、今回は大丈夫そうなので完成となりました。

再加工完成品

以前にあった、腐食痕は外観からは全くわからなくなっています。

今回のように、綺麗に修正できる場合ばかりではありません。
なんともならない場合もあります。

また、この製品は新品であったことも、綺麗に再加工できた理由の一つでもあると言えますので、使用済みで錆びてしまった製品などの場合は、綺麗に仕上がらない可能性もあることをご承知ください。

表面処理の問題解決します。加工可能な表面処理、お問い合わせ前にご確認ください。

9.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者