お客様からお電話があり、
「他社へめっきの色を付け替えて欲しい」とお願いしたら断られてしまって困っているとご相談がありました。

困っているということなので、弊社で対応可能かどうかのために詳しくお話を聞くと、
「他社でめっきして三価白色クロメートの亜鉛めっきが施されているリベット形状の製品を剥がして、三価黒色クロメートに変更して欲しい」とのことでした。

なんで、断ったんだろう・・・そのめっき業者さんも知っているところなのですが・・・

どちらにしても、困っている話ですし、時間がないということでスグに持ち込んでいただけるようなので、早速段取りをして準備しておきます。

製品が届き、箱を開封すると・・・

付け替え前メクラ

なるほど、穴が空いてはいるものの止まり穴になっておりこの中に、めっきが施し難いせいかも・・

弊社では良くある形状なので、そのまま作業を開始します。

工程は、膜厚測定めっき剥離→亜鉛めっき→三価黒色クロメート→遠心分離乾燥→乾燥

という順序で進めていきます。

1.現状の亜鉛めっき膜厚を測定

まずは作業に入る前に、今現在、施されている亜鉛めっきの皮膜の厚さを測定します。
その膜厚によって、どれぐらいの時間、濃度で剥がすかを検討し、めっきを剥がす条件を決めます。

特に、初めて取り扱う製品で、他社めっきの場合は測定しておかなければ思いのほか厚くめっきが施されていて、なかなか剥がれない等手間がかかってしまう場合があるのです。

今回の製品は、測定してみると膜厚 7~9μmほどでしたので、大変な作業ではありません。

めっきの厚さはどうやって測定できる!?

2.三価白色クロメートを塩酸で剥がす

亜鉛めっきの皮膜は、塩酸溶液に浸漬することで剥離することが可能です。
下記の動画のように、亜鉛めっきを剥離して鉄素地だけにしていきます。


「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.剥離した製品を、自動亜鉛めっきラインへ

めっきを剥離して、亜鉛めっき自動ラインへいよいよ入れますが、止まり穴のある製品のため、しっかりと止まり穴の中にめっきが施される条件(バレル内での攪拌効率・電気のまわり)を決めて投入する必要があります。

そして、三価黒色を選択して投入することで亜鉛めっきを施すのに1時間半。


その後、色付けラインへ自動で移動し、20分ほどでめっきラインから三価黒色クロメートを施され、できあがってきます。


4.乾燥不足を補うために再度乾燥

めっきラインから取り出された製品は、通常は完全に乾燥した状態で取り出されるのですが、今回の製品のように、止まり穴のある製品の場合、完全乾燥されていない場合があります。
そのため、濡れていて後日サビが発生してしまうことも考えられますので、別ラインで乾燥を追加し、完全乾燥させます。

付け替え後メクラ

今回の事例のように、他社で断られてしまったというお問い合わせも多くあります。
何が原因で断られるのか詳細はわかりませんが、下記のような事が考えられます。

・止まり穴がある。
・他社のめっきを付け替えるのが面倒。
・都合の良い時だけ頼まれる。
・設備的にできない。
・技術がない。

しかし、これらを前向きに考えてクリアしていく事で、技術も上がりますし、他の仕事につながるのではないでしょか?

後日、類似品で、下記の写真の製品の付け替え依頼をご依頼いただきました。

めっき付け替え前
付け替え前リベット

めっき付け替え後
付け替え後リベット

5.動画で解説しています。


 

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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者