白色アルマイト(無色アルマイト)でも、前処理の違い、表面状態の違いにより外観が変わってきます。
アルミニウムに施された、シルバー調のアルマイト皮膜だから白色アルマイトという風に思ってしまうかもしれませんが、機械的前処理や化学前処理が施された後に、アルマイト皮膜が生成させてあります。

今回、アルミニウムA5052-H112を使用して、前処理の違いによって、どんな風に外観が違うのか?テストピースを作成してみました。

RS_素材

前処理の種類は、下記の4種類になります。

機械的前処理
・サンドブラスト
化学的前処理
・苛性ソーダによるエッチング
・酸性エッチング(化学梨地)
・化学研磨(リン酸・硫酸タイプ)

1.サンドブラスト後の白色アルマイト

A5052素材のフライス仕上げのテストピースに、ガラスビーズを使用して、ブラスト加工を加えた素材にアルマイトを施しました。

工程としては、下記のようになります。

梨地白色アルマイト工程図

アルマイト皮膜の厚さは5μm生成させた状態になります。

仕上がった外観は、下記のように凹凸のある梨地面になっていて、光沢がない状態です。
一般的には、梨地白色アルマイト(梨地無色アルマイト)といわれます。

RS_ブラスト

肉眼で見ると小さな凹凸が表面にあり、触った感じではざらざらしたような凹凸のある表面になります。

2.苛性ソーダによるエッチング後の白色アルマイト

苛性ソーダでエッチング処理をおこなったのちに、アルマイトを施したものが一般的に言われる白色アルマイト・無色アルマイトになります。
こちらが、一番多く使われていることかと思います。
弊社の生産する中でも、一番多い工程になります。

白色アルマイト工程図

仕上がった外観は、シルバー調の光沢のある外観ですが、素材の時と比べると少し曇りがあるような色調になります。
フライス面のため光沢がありますが、素材のままの表面でアルマイトするとここまで光沢は出ない状態になります。

RS_エッチング

肉眼で見るとフライスのツールマークが残っている表面ですが、平滑な表面になっている感じです。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.化学梨地後の白色アルマイト

化学梨地、艶消しという場合には、この化学梨地後にアルマイトが施されます。
化学梨地剤の種類にもよりますが、半光沢から無光沢まで幅広く薬液があり、化学梨地剤の種類によって仕上がり具合が違ってきます。
化学梨地後に白色アルマイトを施す工程が下記のようになります。

化学梨地白色アルマイト工程図

エッチング処理の後に、化学梨地をおこなう工程になっていますが、業者によっては、エッチングを行わず化学梨地をされるところもあるようです。
エッチングを行わない場合、頑固な油汚れなどが除去できない場合もあるため、弊社ではエッチング後に脱スマットをおこなって、化学梨地という工程を組んでいます。

化学梨地白色アルマイトの仕上がり外観は下記の写真のようになります。

RS_化学梨地

白っぽい光沢の無い外観の仕上がりで、見た目はそんなに凹凸のある表面でもなく、触った感じも、ざらざらしていません。

4.化学研磨後の白色アルマイト

化研アルマイト、光沢アルマイトなどという場合には、化学研磨が使用されます。
化学研磨は、素材表面にある凹凸の凸部を溶解させる作用があり、表面を平滑にする目的と、光沢を出す目的で使用されます。
また、化学研磨の液には、硫酸タイプ・硝酸タイプという2種類の化学研磨剤があり、素材によっては、硝酸タイプを使用しなければ光沢が出ないものもあります。
硝酸タイプの化学研磨剤は、亜硝酸ガスが発生し、作業環境的に作業者に負荷がかかるため、弊社では使用することを控えています。

化学研磨後にアルマイトを施す工程は、下記のようになります。

化学研磨白色アルマイト工程図

弊社では脱脂後に化学研磨を施すようにしています。
エッチング工程を加えることで、寸法の変化が起こります。化学研磨でも同様に素材を溶かしますので、寸法の変化が起こります。2度も素材を溶解させてしまうことで、穴径が拡大してしまうのを防ぐためでもあります。

今回、作成したサンプルは硫酸タイプの化学研磨剤で化学研磨処理をしてアルマイト皮膜を生成させています。

RS_化学研磨

ピカピカの仕上がりという感じまでは化学研磨していない状態ではありますが、触った感じでは、ツルッとした平滑な表面で、エッチング後のアルマイトよりも触った感じはツルツルしている感じに仕上がっています。

このようにアルマイトの前処理の違いで、アルマイトが完成した際の外観に違いを作り出すことができます。
今回、テストした前処理意外でも、ヘアーライン加工やサテン処理など様々な方法で前処理をおこなうことで仕上がり外観が変えることができます。

5.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者