先日、弊社のYouTubeにコメントを頂いたのですが、
『赤色の着色アルマイトを処理した自転車部品が、太陽光で退色した経験があります。日光に長期間さらされても退色しない着色アルマイトは可能なのでしょうか?』というコメントをいただきました。

アルミサッシもアルマイト処理なのですが、アルミサッシは退色をしたりすることは、ほとんどありませんよね?


なのに、自転車などの部品のようにカラフルに着色アルマイトした製品は、なぜ退色するのでしょうか?

この退色について、お話をしたいと思います。
カラーアルマイトには、大きく分けて3つの方法があります

  • 染色アルマイト
  • 二次電解着色アルマイト
  • 自然発色アルマイト

1.染色アルマイト

染色アルマイト品は、色調が豊富で様々なアルマイト加工品に採用され使用されていますが、太陽光、熱などにさらされて退色してしまう場合があります。
これは、染色アルマイトで使用している水溶性有機染料特有の現象でもあります。
退色してしまう要因として、次の3つの要因があります。

  • 熱による退色
  • 太陽光の紫外線による退色
  • 酸素や空気中の水分による緩やかな退色

これらは、アルマイト皮膜の中に入った染料分子が、熱や紫外線の照射、湿気に含まれる酸素などにより染料分子構造が壊されていくために起こる現象になります。

そのため、退色を少しでも防止するには、アルマイト皮膜のポアの中に染料をできるだけ沢山入れ、染色することで、色が残る可能性を高くした方が良いです。

アルマイト皮膜のポアの中に、100個の染料分子を入れるよりも、300個の染料分子を入れる方が長く色が残る可能性があるということになります。

2.二次電解着色

2次電解着色は、1次電解としてアルマイト皮膜を生成させたのちに、2次電解をおこない、1次電解で生成させたアルマイト皮膜の中に、金属を2次電解で着色する技術です。
2次電解着色では、錫やニッケルを含んだ液に浸漬し、電解することで、アルマイト皮膜のポアの中に、錫やニッケルが電気的に吸着され着色されます。

身近なものでは、アルミサッシなどに使用されていて、太陽光などの紫外線による影響や熱による退色にも強い着色となります。
染色アルマイトほどカラーの種類はありませんが、ステン・ブロンズ・ブラック、グレーなどアルミサッシに見られるようなカラーリングがあります。

この2次電解着色は、比較的建材などで用いられることが多く、小さな部品等でおこなっているメーカーは少ないです。
弊社で取り扱っている商品の中に、工場で使用する製品識別看板がありますが、そちらは、大きなアルミのサブロクの板のまま、2次電解着色アルマイトを協力会社の方で手配し、その後に幅100ミリ×高さ150ミリのサイズに加工して使用しています。

そのため、下記の写真のように切断面にはアルマイト皮膜がありませんが、製品用途として、表面となる面にレーザー彫刻をおこない看板として使用する目的なので、側面や穴の中は皮膜がいらないということで、このような加工方法をとっています。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.自然発色

アルマイト皮膜は通常無色透明ですが、特殊な条件下では色のついた皮膜となります。このような着色しながら皮膜が生成する皮膜を自然発色皮膜と言います。
自然発色皮膜の生成には、次の3つの条件と密接な関係があります。

  • アルミニウムの純度
  • 電解液の種類
  • 電源波形

アルミニウムのどの合金を使い、アルマイトする電解液は、どのようなものを使うのか?そして、皮膜を生成させるための電流を流す電源は、どのような波形を使用するか?によって発色の度合いが変わってくるのです。
この3条件のうち、どれかが違うだけでも、色調は違ってきてしまうとともに、処理するメーカーが違うだけでも、色調は変わってきます。
色調も染色アルマイトほど多彩な色調はなく、2次電解着色と同じぐらいの色調ですが、この処理をおこなっているメーカーは聞いたことがありません。

ですが、アルマイトを依頼したことがある人なら、見たことがあるかもしれません。
A7075などのジュラルミン系の素材を、アルマイト依頼したらシャンパンゴールドのような淡い金色になってしまった経験ありませんか?これも硫酸アルマイトによる自然発色なのです。
アルミニウム合金中に含まれる、金属成分と硫酸アルマイト液、電流波形により、故意ではありませんが、A7000系素材は発色してしまいます。

カラーアルマイトを退色しないようにできる限り長く使いたい場合、色の濃さを薄くすると、染料が熱・紫外線や空気中の水分などによって退色してしまいます。ですので、濃い色を選択することで、退色を遅くすることができます。また、アルマイトの仕上げ処理でもある封孔処理を確実におこなっておく必要があります。


封孔処理がしっかりされているか、確認する記事を以前に書いていますので、下記の記事をご参考にしていただけたらと思います。

アルマイトの封孔処理が確実にされているか簡易的に確認する方法!

また、屋外などで使用される場合、UVカットのクリア塗装などをされるのも紫外線や空気中の水分を遮断しますので、効果的だと思います。

4.動画で解説しています。


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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者