カラーアルマイトを施した製品が、熱や紫外線に晒されて色が退色してしまう事例があります。
熱や紫外線により退色した場合に、耐食性能も同じように低下してしまっているのかについて ご紹介していきます。

まずは、カラーアルマイトはどのように染色されているかを簡単に、下記の図を使って説明します。

一番左のアルマイトの図は、電解が終わりアルマイト皮膜が生成した状態です。
アルミ素地からアルマイト皮膜が生成し、皮膜に孔があいている状態です。

その穴の中に、染料を入れるのが真ん中の図(染色)になり、黄色の染料が孔の中に吸着され入っていきます。染料で着色している時間が長く、温度・濃度が高い方がたくさんの染料が入り色の濃さは濃くなる方向へ進んでいきます。

染料を入れた後に、封孔処理を施すと一番右の図(封孔処理)のように水和反応で孔が閉じ染料が抜け出ることがなくなるとともに、耐食性が向上します。

では、なぜカラーアルマイトの色が退色するのでしょうか?
それを説明していきます。

1.カラーアルマイトの退色

以前にもご紹介していますが、再度、ご説明させていただきます。
アルマイトの染料は水溶性有機染料を使用しています。
この水溶性有機染料は、

  • 熱による退色
  • 太陽光の紫外線による退色
  • 酸素や空気中の水分による緩やかな退色

などにより、染料の分子構造が壊されていくために起こる現象になります。

熱によるカラーアルマイトの染料への影響は、退色劣化の影響が大きいです。
退色だけでなくアルマイト皮膜にクラックが発生してしまうこともあり、アルマイト後の乾燥も含め注意が必要になります。

より詳しくは、下記の記事をご参考にしてください。

カラーアルマイトは、なぜ退色するのか!?

2.熱による退色したカラーアルマイトの耐食性

カラーアルマイトした製品に熱を加えた場合、熱の温度・時間にもよりますが、退色してしまう場合があります。
これは、加えられた熱により有機染料の分子構造が破壊され、退色することになります。
では、アルマイト皮膜そのものの耐食性ですが、アルマイト皮膜はおよそ100℃以上の熱を加えると皮膜にクラックが入る場合があります。皮膜の硬さや厚みによっても違ってきますが、2000倍に皮膜を拡大してみると、皮膜にクラックが入ります。

熱が素材やアルマイト皮膜に加えられた場合、熱により素材が膨張しアルマイト皮膜を内側から押し破るかのように膨張した場合、素材の残留応力によりアルマイト皮膜と素材との密着性が低下してしまい、セロハンテープなどを表面に貼って剥がしてみると、アルマイト皮膜が剥がれてしまうことがあります。

そのような現象がおこってしまうと、アルマイト皮膜が剥がれた部分はアルミ素地が露出しますので、耐食性は低下してしまうことになります。

シルク印刷工程などで、熱が加えられた場合にも、このような現象が起こることがあります。

3.紫外線で退色したカラーアルマイトの耐食性

カラーアルマイトされた製品が、太陽光の紫外線により退色した場合、アルマイトそのものの耐食性も落ちてしまうのか!?と、気になるかと思います。

基本的には、紫外線により退色しているのは、有機染料の分子構造が破壊されているだけで、アルマイト皮膜が壊されているわけではないため、耐食性が低下するということはありません。

ですが、どんな物でも生産された直後より、劣化が始まります。
永遠に耐食性を保持するものではないため、アルマイト皮膜も生産直後→1年後→3年後→5年後と時間が進むにつれて耐食性は落ちていきます。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

4.酸素や空気中の水分による緩やかな退色

常に太陽光の光を受けて気温が上がり、湿度の高い雰囲気では湿気に含まれる水分・酸素の影響も受け、染料分子に対する劣化因子が強くなり分子構造の破壊を促進してしまいます。

これらをできる限り抑制するには、同じ表面積のアルマイト孔中にできだけ沢山の染料分子を入れることで、色が残る可能性を高くするようにします。

淡い色よりも、濃い色の方が色が残る可能性が高いということになります。

染料を多く吸着させるためにアルマイト皮膜の厚さを厚くし、できる限り皮膜の奥まで染料を入れるために、液攪拌などを十分におこなう必要があります。
これに加え、封孔処理を確実におこなうことで、染料が孔の内部から外へと抜け出ることを防止する事が大切です。

5.動画で解説しています。


 

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この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者