以前の記事『アルマイトの前処理で、どのようにアルミニウム表面の粗さが変化するのか?』と、
『前処理の違いによる白色アルマイトの外観の色調』でご色調や表面粗さをご紹介させていただきましたが・・・

今回は、各サンプルを顕微鏡で100倍〜1500倍まで拡大し表面の状態を確認してみました。
肉眼で見るのと、拡大してみるのとでは思っていた以上に違いがありましたので、処理内容別にご紹介させていただきます。

テストピースに処理した内容を再確認のために下記に記載しておきます。

  • アルミニウム素地のまま
    機械的前処理
  • サンドブラスト
化学的前処理
  • 苛性ソーダによるエッチング
  • 酸性エッチング(化学梨地)
  • 化学研磨(リン酸・硫酸タイプ)



この5パターンになります。

1.アルミニウム素地の拡大写真

最初にアルミニウム素地の状態を拡大した写真をご紹介したいと思います。

素地の状態は以前の記事でもご紹介したようにフライスで仕上げのため、表面粗さはRa で0.100μmでした。
処理内容など詳しいことは、こちらの記事でご確認ください。

RS_素材

では、その表面状態を拡大してみてみると、どんな状態なのか?
下記の写真が各倍率での拡大写真になります。

×100倍

×500倍

×1000倍

×1500倍

※写真をクリックすると拡大します。


フライスのツールマークの痕なのでしょうか?
縦に筋が入っているのがわかります。
この表面状態がベースとなりアルマイトの前処理で、どのように変化していくのか?
と言うのを確認していきます。

2.サンドブラスト後アルマイトの拡大写真

先ほどのアルミニウム素地に、直径100μmのガラスビーズを使用して、サンドブラストを投射し、アルマイト皮膜を生成させたテストピースの表面を拡大して観察してみました。
処理内容など詳しいことは、こちらの記事でご確認ください。

RS_ブラスト

このテストピースの表面粗さはRaで2.001μmでしたので、どんな状態になっているのか!?
拡大写真は、下記になります。

×100倍

×500倍

×1000倍

×1500倍

※写真をクリックすると拡大します。

先ほどの写真と比べて、ざらついていることが×100倍の写真でもわかります。
この状態にまでなると、アンカー効果を期待でき、接着剤の密着性や塗膜の密着性が向上することは間違いありません。

「めっき・表面処理用語集」知りたい用語を検索。こちらで詳しく解説しています。

3.苛性ソーダによるエッチング後アルマイトの拡大写真

アルマイトを施した状態で、拡大写真や表面の粗さを測定しているので、本当に前処理の違いなのか?と言うことも考えられますので、通常のアルマイト前処理をおこなったテストピースも作成して比較しています。

RS_エッチング

苛性ソーダでエッチングして、その後にアルマイトした状態の表面粗さはRaで0.236μmでしたので、素地の時と比べて大きな違いがないことが数値ではわかっています。
処理内容など詳しいことは、こちらの記事でご確認ください。

ですが、拡大してみたらどんなことがわかるのか?
観察してみた写真が、下記になります。

×100倍

×500倍

×1000倍

×1500倍

※写真をクリックすると拡大します。

最初のアルミニウム素地のままの拡大写真とは、あきらかに違います。
ツールマークの後のような模様は、少し残っている感じですがエッチング工程でエッチングし、アルマイトの皮膜が生成したことにより、表面の状態が変わっていることがわかりますが、接着剤や塗膜の密着性を問う場合には、強固な密着性を得られるような表面ではないように見えます。

倍率の高い写真の、黒い析出物のようなものが気にはなりますが、今回、解析をお願いはしていないので、何かはわかりませんが封孔剤に含まれるニッケル分なのかもしれません。

4.化学梨地後アルマイトの拡大写真

サンドブラストの次に、密着性に効果のありそうな化学梨地のテストピースですが、表面粗さはRaで0.700μmでしたが、見た目はあきらかに素材の状態と違いますので、凹凸していることが期待できます。
処理内容など詳しいことは、こちらの記事でご確認ください。

RS_化学梨地

素材の際にあったツールマークは、化学梨地で消えて見えなくなっているので、サンドブラストのような表面状態になっているのか?
拡大してみた写真が、下記になります。

×100倍

×500倍

×1000倍

×1500倍

※写真をクリックすると拡大します。

拡大写真を見てみると、サンドブラストを施したテストピースと同じような表面状態になっていることがわかります。比較してみるとサンドブラストの表面状態より、化学梨地の状態の方がキメが細かいような感じに仕上がっていることがわかります。

このキメの細かさが表面粗さにも出てきていることが、以前の記事の粗さ曲線を比較してみるとわかります。

サンドブラストの粗さ曲線は、凹凸の幅が広いのですが、化学梨地の粗さ曲線は凹凸の幅が狭くなっています。

5.化学研磨後アルマイトの拡大写真

テストピースを化学研磨後にアルマイトを施したテストピースは、どんな感じになっているのか?
テストピースを触った感じではツルツルした仕上がりになっていて、平滑な表面になっているように感じましたが

RS_化学研磨

表面粗さを測定した際には、Raで、0.298μmとカセイソーダによるエッチングよりも凹凸がありました。
処理内容など詳しいことは、こちらの記事でご確認ください。

凹凸はあったものの、触った感じは素材の状態とは違うので、どのような表面状態になっているのか?
拡大してみた写真が、下記になります。

×100倍

×500倍

×1000倍

×1500倍

※写真をクリックすると拡大します。

これはまた、今までとは違うような表面状態になっています。
ツールマークの痕は消えており、なめらかな感じはしますが、少し凹凸がある表面になっています。ですが、化学梨地などと比べると凹凸があると言っても、緩やかな凹凸に感じます。

化学研磨でツールマークの凸部を溶解させてなめらかな表面になったと考えられるかと思います。

6.動画で解説しています。

 

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青色アルマイトのサンドブラスト表面と切削表面の仕上がりの違い

この記事の著者は

株式会社小池テクノ 代表取締役 大橋 一友

株式会社 小池テクノ 代表取締役社長
大橋 一友
毒物劇物取扱責任者
水質関係第二種公害防止管理者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
化学物質管理者
特別管理産業廃棄物管理責任者